ハルジオンで吸蜜するウスバアゲハ
↑ ↑ ↑
セリバヒエンソウ、ムラサキケマン、ヒメオドリコソウ
偶然見つけた毒草3 種です。特にセリバヒエンソウはアルカロイド系の毒性が強い毒草です!
(少年の森にて 2018.04.08)
|
4 月活動「雑草を食べる会」は楽しかったですか。
今回は食べてはいけない毒草の一つに
ムラサキケマンがありましたね。
ヒトには毒でも、これを食草にしているチョウ(幼虫)がいます。
ウスバアゲハ(別名ウスバシロチョウ)アゲハチョウ科のなかまです。
昔はモンシロチョウのように藤沢市内でも普通にみられたチョウかと思われますが、現在は確認されていません?
神奈川県北西部なら山間部も含め平地でも見られます。(少年の森のような環境)
ウスバアゲハの幼虫は毒草である
ムラサキケマンを食べています。
ここで何かおやっと思いませんか・・・!
- 1、 なぜ幼虫は平気なの?
-
簡単に説明すると、ムラサキケマンに含まれている毒性物質(アルカロイド系)は幼虫にとっては毒ではないからです。
体内に循環させずに蓄積(ちくせき)している(ためている)のです。
特に強い毒を持つ生物はほかにもいます。
スズメバチなどのハチのなかま、マムシやコブラなどの毒ヘビ、サソリ、フグなど。
植物ならケシのなかま、トリカブト、ヒガンバナなど。キノコ、カビ(菌類といいます)や細菌類(大腸菌O157など)も多いです。
毒は生物によって、体内に蓄積するだけのタイプと攻撃の手段に使うタイプがあります。
- 2、なぜ毒草を食べるの?
-
体内に循環させずに蓄積しているということは、成虫になっても毒を持っているということで、
ウスバアゲハは「毒チョウ」なのです。これは意外と知られていません。
私も採集していた中学生の頃は全く知りませんでした。
普通ヒトはチョウを食べませんが、鳥類などはエサにします。
でもウスバアゲハは鳥類に食べられません。(鳥たちもわかっているのです)
つまり、外敵から身を守る生き残る手段なのです。このような手段を持つ生物は数多くいます。
どんな生物たちかは、上記以外に調べてみましょう。
そして調べてくれた人は、ぜひ石井団長または鹿児嶋先生へ
「かたつむり」用原稿を送ってください。質問・疑問も歓迎します。
ウスバアゲハ(個人標本)
|
では、ウスバアゲハを紹介しましょう。
●ウスバアゲハとウスバシロチョウの名称:アゲハチョウ科なのに最近までウスバシロチョウと呼ばれていました。
シロチョウと呼ぶとモンシロチョウと同じなかま(シロチョウ科)と勘違いするために改名されたそうです。
(白水 隆 著の日本産蝶類標準図鑑 学研出版をより)
●特徴:大きさはモンシロチョウ程度、翅(はね)全体が半透明でうっすらと白く黒い斑点(はんてん)、黒すじがはっきりしています。
体は黒色と黄色の毛が細かく生えています。
●生息地域:もともと北方系のチョウですが、神奈川県内では北西部に生息しています。
日本では北海道、本州、四国に広く分布していますが、なぜか九州には生息していません。海外では中国や朝鮮半島にも生息しています。
●ウスバアゲハのなかま:
ウスバアゲハ・ヒメウスバアゲハ(北海道固有種)・
キイロウスバアゲハ(北海道の大雪山系のみに生息する固有種で国の特別天然記念物に指定されています)
終齢幼虫
|
●生態:ギフチョウと同じで成虫は年1 回だけ発生し、見られるのは4月〜6月ごろです。
幼虫はややつやのある真っ黒な体におしゃれなラインが目印です。食草はムラサキケマンの花や葉です。
幼虫の期間は約60 日ぐらいですが、その習性はとても変わっていて、
ガのなかまのように昼間は落葉の下や食草の根元付近に隠れている場合が多く、夜間に食草を食べます。
でも平気で昼間に堂々と目立つ地上で日向ぼっこもします。触るとアゲハと同じで臭角を出します。
さらにダンゴムシのように丸くなることから、ヨトウガ
★
の幼虫(ヨトウムシ)と姿も習性ともよく似ており、特にカイコのように繭(まゆ)を作ってその中で蛹になります。
夏〜冬の約半年を蛹で過ごし、翌春に羽化します。
よく蛾(ガ)の幼虫や蛹と間違いやすい習性をもっています。
さらに成虫の飛び方も普通のチョウのようにバタバタ飛ばずに、グライダーのようにゆっくり優雅(ゆうが)に飛びます。
理由はわかりますね、鳥にねらわれないからです。
★ヨトウガひとくちメモ
農作物を食い荒らす害虫の一種です。
昼間は隠れていて、夜になると畑の作物をむしゃむしゃと食べてしまうので漢字で成虫は「夜盗蛾」幼虫は「夜盗虫」と書きます。
右の写真は比較のため、よく見かけるシロチョウ科のモンシロチョウ(左)とスジグロチョウ(右)の標本写真です。
少年の森でたくさん見かけた白っぽいチョウはほぼこの2種類です。
今の時期でしたら、前号のかたつむりで紹介した相模原市の石砂山(いしざれやま)でしたら、
山麓ではウスバアゲハ、山頂ではギフチョウの両方に出会うことができるでしょう。
そして新緑と野草の可憐な花が満喫できると思います。春から初夏のハイキングにいかがでしょうか。
- ・参考文献:白水 隆 著の日本産蝶類標準図鑑 学研出版
- 安田 守 著のイモムシハンドブック 文一総合出版
-
毒草ベスト10
https://ameblo.jp/czulhu/entry-11561268979.html
- ・写真出展:
- 種別生態写真と解説
-
http://butterflyandsky.fan.coocan.jp/shubetsu/ageha/usushi/usushi.html
- ウィキペディア
-
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%90%E3%82%B7%E3%83%AD%E3%83%81%E3%83%A7%E3%82%A6