暮らしの中の鉱物 〜アスベスト〜 |
運営委員 藤 本 俊 二 |
最近、テレビでもよく報道されている「アスベスト」。
皆さんも一度はこの言葉を聞いた事がありますよね。 アスベストは防音、耐熱素材の優れものとして1970年頃から学校やビルなどの建物の天井や 車の部品などによく使われてきました。 しかし、アスベストは体内に入ると30〜40年の潜伏期間を経て肺ガンや中皮種の病気を引き起こす 大変恐ろしい物質であり、最近になって色々なところで症状が現れはじめ騒ぎになっています。 では、アスベストとはどのような物なのでしょうか。 アスベストとは鉱物の名前ではなく、容易に繊維状にできる耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性、 電気絶縁性などに優れた鉱物の総称(グループ)と定義されています。 具体的にどのような鉱物があるかというと、蛇紋石と角閃石があり、蛇紋石からクリソタイル(白石綿)、 角閃石からクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト(直閃石綿)、 トレモライト(透角閃石綿)、アクチノライト(陽起石綿)などに分類されます。 しかし、これら全てが人体に大きな影響を及ぼすかというとそうではありません。 基本的に蛇紋石系は毒性が弱く体内に入っても体内では溶けやすいため、 人体に影響はほとんどないと考えられています。しかし、角閃石系ではどの鉱物も毒性が強く、 角閃石系のアスベストが体内に入ると肺ガンや中皮種などの病気にかかるそうです。 最近では学校や駅、ビルなどの天井にアスベストが吹き付けられている事が理由で天井を壊し、 アスベストを除去する工事がよく行われています。アスベストは繊維状であるため、 空気中に飛散しやすく体内に入りやすい特徴があり、 アスベストが表面に出ている場所では除去作業が必要ですが、 アスベストの表面をコーティングがされていれば飛散する可能性は少なく、 人体への影響は多くありません。 また、色々な調査結果から建物の天井に使われているアスベストは蛇紋石系が多いことが分かっています。 アスベストいう言葉を聞くと皆さん驚いて人体への影響などを心配する人も多いと思いますが、 日常で使われているアスベストは毒性が弱く、直接の影響は大きなものではありません。 現代の世の中では鉱物がなければ私たち人間は生活ができなくなるほど、重要な資源となっています。 しかし、鉱物学の研究は古くから行われているのにもかかわらず、まだまだ分からない事がたくさんあり、 これからも色々な研究が必要で注目されなければならない分野であると言えます。 |
****鉱物や地学に関する面白い参考図書***** |
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****地学に関するちょっと難しい参考図書***** |
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この他にも鉱物や岩石に関する本はまだまだたくさんありますので、
図書館や本屋さんで探ってみて見てください!! |
藤本君は今年東海大学大学院修士課程を修了し、理学修士(博士の一歩手前)になりました。 偉大なる先輩に拍手! その藤本君の修士論文の要旨です。 |
東海大学大学院平成17年度修士論文要旨 西丹沢周辺の深成岩体構造と岩脈の分布について 指導教員 金 容義教授 藤本 俊二 |
丹沢山地は南部フォッサマグナ地域および伊豆―小笠原弧北端部に位置し、
島弧地殻の形成を解明するのに重要な地域である。
地質的には中央部に斑れい岩とトーナル岩からなる深成岩類複合岩体が分布し、
この深成岩類複合岩体を取り囲むように岩体の外側に丹沢層群がドーム状構造を呈して分布する。 川手(1997)は滝田(1974;1980)の区分を基に深成岩体の形成過程を第1ステージから第4ステージまでの 4つのステージにまとめた。このうち、第3ステージの畦ヶ丸型、ユーシン型が最も広く分布し、 本調査地域に分布するトーナル岩も畦ヶ丸型のものである。 滝田(1974)によると大又沢以東ではフォリエイションは一部でしか確認できないと報告されているが、 踏査の結果から大又沢以東の用木沢出合周辺から畦ヶ丸登山道、白石林道、東沢・犬越路林道、 犬越路登山道でも葉状構造を確認することができた。 また、金丸・高橋(2005)ではこの地域一体のフォリエイションについて磁性鉱物を用いた帯磁率異方性の手法を 用いて測定を行っているが、野外での調査データについては報告が少ない。 本調査では野外での調査を行い、フォリエイションはNW方向の走向を示していた。 しかし、金丸・高橋(2005)でも報告されているように顕微鏡下では多くの鉱物が半自形の形を示し、 露頭で観察されるほど顕著ではなかったものの、56°の劈開角を示す角閃石の配列を確認する事ができた。 また、フォリエイションの走向は現在のフィリピン海プレートの方向と調和的であり、 深成岩類複合岩体の構造とプレート運動には何らかの関係あるいは影響があると解釈される。 今永ほか(1999)や有馬ほか(1999)などで、丹沢山地では全体的に小岩体、 岩脈については未調査なものが多いと指摘している。本調査では犬越路林道のトーナル岩中からひん岩脈を、 神ノ川中流〜上流域、犬越路隧道付近の塔ヶ岳亜層群中から石英斑岩〜ひん岩からなる複合岩脈を確認した。 岩脈はいずれもNE方向を向いており、 犬越路林道のひん岩脈はトーナル岩のフォリエイションの走向と垂直関係にあり、 トーナル岩の熱水期の産物であると解釈される(藤本・金,2005)。 本調査では室久保川でミグマタイトを確認した。 丹沢深成岩体と同じく南部フォッサマグナ地域に分布する新第三紀の花崗岩体である徳和岩体(斉藤,2002)や 甲斐駒ケ岳岩体(金,2004MS)などではミグマタイトが分布しているのが確認されていることから ミグマタイトである可能性も十分にあると解釈される。 |