このレポートは、かたつむりNo.442[2017(平成29)06.18(Sun.)]に掲載されました

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ん、100グラム!? 〜団長のつぶやき〜1
団長 石 井 幹 夫
 
 以前、「新米団長の独り言」と題してその時どきに感じたことなどを寄稿していましたが、諸般の事情でやむなく休載していました。
 ふと気づいたら、何と団長職も3年目になってしまいました。そこで「このままではいかん!」と一念発起して団長コラムを再開することにしました。
 さて、タイトルはどうしよう?もう新米団長ではないし、・・・。「3年目団長の独り言」も何となくすわりが悪い、ということで「団長のつぶやき」と決めました。 不定期に寄稿します。掲載された際には是非ご一読ください。

 ところで、今回の題は「ん、100グラム!?」
 5月3日に事務局の鹿児嶋副団長から連絡メールがまわりました。内容は次の通りです。
2017/05/03(水) 22:09
藤沢市科学少年団 事務局 鹿児嶋です。
5月21日(日)の活動についての連絡です。
天ぷらやフライで使った食用油を使用します。4月活動の残りでは油がたりないので、可能な限りご家庭で用意をお願いします。
500ml のペットボトルに廃油を「100グラム」なるべく正確に計って入れてきてください。
※新しい油ではうまく実験ができません。
油が用意できない場合は、空の500ml ペットボトルを持参してください。
添付写真のような石けんを作ります。お楽しみに!

 「100gをなるべく正確に計ってください。」とあります。皆さんはどう感じられましたか?何か意図を感じ取っていただけましたか?
 そう、ペットボトルに廃油を「100gくらい」ではなく「なるべく正確に100g」だったんです。

 石けんは、油脂と水酸化ナトリウムを反応させて作ります。 水酸化ナトリウムは医薬用外劇物でタンパク質を冒す(おかす)性質があり、非常に危険な薬品です。 万が一目に入ると失明の危険があります。以前、手作り石けんがブームになっていたときもありましたが、最近は下火になっています。 たぶん、水酸化ナトリウムの扱いにくさもその一因ではないかと思っています。

 中学・高校の化学の時間に学ばれたと思いますが、化学変化はある一定の質量の比でおきます。 中学校では、銅の酸化反応で、銅:酸素=4:1と学習しました。
 水の合成で考えると、化学反応式は2H+O→2HOでした。懐かしいですか? 見たくもありませんか?きっと科学少年団にお子様を入団させたご家庭なので懐かしいと思っていただける方が多いと信じています。 化学的に正確に表現すると、「水素2モルと酸素1モルが反応して水が2モルできる。」です。 もうちょっと砕いて表現すると、「水素4gと酸素32gが反応して水が36gできる。」と言うことになります。 つまり、水素:酸素=1:8ですね。
化学変化では、反応に参加する物質の質量がとても大切になるんです。

 さて、今回の反応。専門的には「鹸化(ケンカ)」と言います。そして1gの油脂を鹸化するために必要な水酸化ナトリウムの質量(鹸化価)は決まっています。 また、その質量は油脂の種類により異なっています。今回は天ぷら油の廃油でした。天ぷらに使う油は何種類かあり、しかも廃油ですのでさらに状況は複雑です。
 そこで、今回の活動を行うにあたり、さまざまな資料を調べました。そして概ね「廃油100gに対し水酸化ナトリウムが12〜14g」だということが分かりました。 そして多くの実践で水酸化ナトリウムを14g使っていました。そこで今回は、廃油100gに水酸化ナトリウム14gを使うことにしました。 そこから、今回のお願いになったのです。

 細かい事情をお話しせず、いきなり「正確に100g」だったので戸惑われた方もいらっしゃったかもしれません。 詳しく説明していなくても「『正確に』と書いてあるのだから、きっと100gには何か意味があるんだろうな」と思っていただけたら幸いでした。

 今回団員に確認したら、正確に100g計ったと自信のある団員はごく少数でした。 うっかり100mL計ってきたと自信を持って言える団員も少なく、ほとんどの団員が「わかんない!」でした。 是非ご家庭で保護者の皆様と団員の皆さんで一緒に準備をしていただけたら幸いです。
 仕方が無かったので、はっきり100gと言える団員以外はいそぎんちゃくのお兄さんお姉さんにお願いして全部計り直してもらいました。

 今回の石けんづくりで、家に帰ってからのお願いもいろいろありました。 まず、ペットボトルの中で1週間ほど寝かせ、取り出してからさらに1ヶ月ほど熟成させる、と。
 この作業は、できあがった石けんに残っているであろう未反応の水酸化ナトリウムをなくすために大切な期間だったのです。 水酸化ナトリウムを空気中に放置すると、空気中の二酸化炭素を吸収して炭酸ナトリウムに変わります。 こうなれば安心して使えるのですが、そのために必要な時間が熟成期間と言うことでした。

 これからも少年団ではいろいろなお願いをします。 細かい説明ができない場合がほとんどではあると思いますが、団としていろいろ検討した結果のお願いです。 申し訳ありませんが、ご自分なりの解釈はされないで、指示通りの準備をお願いします。
 早速、7月活動では「小型のカッターナイフ」というお願いがあります。
 7月活動の立体地形図づくりでは、うすいスチレンペーパーを地図の等高線に沿って切り抜いていきます。 そのため、通常のカッターナイフの刃でも工作しづらいので、団で細工用のカッター替え刃(刃先が30°)を用意し、これにかえて作業します。
 逆に竹を削る活動であれば、本当は小刀がベスト、無いときは大型のカッターナイフを使います。この時は小型のカッターナイフでは危険です。

 団からのお願いには一つひとつ意味がありますので、どうかよろしくお願いします。 よく分からない場合は事務局鹿児嶋副団長宛お問い合わせください。




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