小さな秋、大きな柿(1) |
運営委員 道 上 定 |
さすがに「サンマは目黒」である。この秋東京目黒区最大の図書館が開いたのですが、
収蔵書籍は40万冊、床はワンフロアで面積3020平方メートル。ゆったりしたスペースが知
的な人たちでいっぱい。火曜から土曜日は午後9時まで開いており、おおぜいの人に利用し
てもらおう、との魂胆。なるほど大衆魚のサンマがシンボルマークになっているだけにホ
ッとします。 でも目黒の秋はサンマに限らなかった。名前の通り八雲一丁目にその区立「八雲中央図 書館」はあるのですが、「めぐろパーシモンホール」も八雲体育館とともに併設されていま す。 そのめぐろパーシモンホール(柿の木劇場)の柿(こけら)落としコンサートが9 月下旬に 行なわれました。若杉弘さんの棒で東京都交響楽団がバッハ/ストコフスキー:<<前奏曲>> で始まり、オッフェンバッハ/ローザンタール:カン・カン(パリの歓び)で仕上げたのです が、なにせお祭り気分で盛り上がり、カーテンコールでは外山雄三のラプソディとそーら ん節が演奏されました。定員1200名の「小振りな」大ホールですからアットホームに感じ ます。ホールの隣は「柿の木坂」町内べートヴェン:<<皇帝>>でのピアノの園田高弘さん、 司会の後藤美代子さんそして指揮者の若杉さんも目黒区在住でおたがい知り合いですし、 お客にしてからが商店街のだんなやおかみさんたちですから雰囲気いいわけです。 と言うわけで、それはさておいて今回は柿(かき)のことです。 10月の自然観察ではいたち川に沿って人里を散策したのですが、おそらく屋敷樹として 植えられた柿の木に色付いた実がなっておりました。ほったらかしにされた木でさえ今年 は豊作のようです。ハンテンボク、カヤノミ、イガグリ、オナモミに触れ、思金神社では 祭りをひかえて行燈をつるし、太鼓の練習と、まさに秋本番の最中。 団員OBが葉のついた柿にかじりついていたのが印象的でした。昼飯どきにはこの日参 加の保護者の方から米菓「カキのたね」のちいさなあられ2個が入ったキャンディを頂き ました。しゃぶっていて、たねがでたら今度はかじるという・・・このミスマッチの食感どう するの!でもごちそうさまでした。 日本むかしばなしの中に「さるかに合戦」があります(原話を忠実に再録したという「日 本昔語百選」(稲田浩二・稲田和子編著、三省堂)では「蟹の仇討ち」となっており、山梨 県西八代郡での再話です。ついでのことですが、この西八代郡と神奈川県津久井郡とは行 き来があり、たとえば今年の夏季宿泊活動で苦労して登った「犬越路」についての民話は 西八代郡にもあるようです。山梨のもめん行商の交流が大きな役目を果たしたようです。 「さるかに合戦」は江戸時代の五大昔話に数えられており、九州地方にまで及びます。) 蟹は「早く芽を出せ柿のタネ」と脅かしながら育てるのですが、実生の場合はそんなに 早くは実を付けませんよ。10年はかかります。そして、先祖返りといって、ちいちゃな野 性に戻った柿になります。 十分にまちがいなく親と同じような柿を収穫するには「つぎ木」をやります「柿8年」 はかかりません。つぎ木苗で育てますと3年目にはもう柿の実がなります。もっともこれ は他の果樹でもいえることです。 |
(次号に続く) |