小さな秋、大きな柿(2) | ||
運営委員 道 上 定 | ||
柿のばあい、実を1個付けるのに25枚の葉っぱを必要とすることが分かっていますので、
たくさんの実をならそうとすると木の体力が弱り、次の年は実を付けません。
これを「隔年結果」といいます。つまり、一年おきの豊作というわけです。 あま柿・しぶ柿のことですが4つに分けます。完全甘柿、不完全甘柿、 不完全渋柿・完全渋柿。タネがあろうとなかろうとゴマ(つまり、褐斑)ができ、 渋が抜けるものが完全甘柿。ゴマができないものを完全渋柿といいます。 甘いか渋いかのタネはまさにタネにあるわけ! どういうことかというと、 最近の研究でこのタネにゴマを形成させる揮発性物質があるらしいと、 分かってきたのです。タネがありゴマができたら甘柿となり、 なければ渋柿となる(=不完全甘柿)。タネがゴマを作るのにあまり影響しないと渋柿となる (=不完全渋柿)のです。これは人間のご都合で分けているのですが、 しかし生物界でみれば人間を含めた動物に、 タネがすっかりできなければ渋いから食えないよ、タネが完成すれば甘くなるよ、 というのが進化の方向ではないか。とすれば、 もともとカキは渋柿が本来の姿ではないのかなぁ、 と私は思います。カキは1000種もあるのですが、完全甘柿はわずかに10数品種でしかも岐阜県、 東海から近畿地方だけです。 江戸時代中頃か宝暦4年(1754 年)編纂の『日本山海名物図会』には巻之二に大和御所柿、 京木練(こねり)柿、大和稗(しぶがき)、美濃鈞(つるし)柿の4つが紹介されており、 御所柿をのぞき他はいずれも渋柿です。大和稗は紙細工に使う柿渋をとるためのもの。 藤沢駅周辺で販売されている柿の品種を調べてみました。小田急藤沢店では愛媛の 「富士」、奈良の「刀根早生」。藤沢さいか屡では和歌山産「刀根」。 イトーヨーカドー藤沢店では岐阜「富有(種あり)」、愛知の「次郎」、奈良の「たねなし柿」、 オーケーディスカウントセンター藤沢店では和歌山「ひらたねなし」。 ザ・マーケットでは佐渡の「おけさ柿(刀根早生)」、愛媛の「富士」、 トポスでは愛知西三河の「ふで柿」、愛知の「西村早生」でした(10/25 現在)。 富士・刀根早生は渋柿、富有・次郎は甘柿。西村早生は不完全甘柿で、 ふで柿は愛知県額田郡幸田町特産の甘柿。 そこで神奈川県産の柿についてです。 県内で一番小さい甘柿は川崎市麻生区の王禅寺を中心とした「禅寺丸柿」で不完全甘柿。 おおよそ1個径55ox高さ47o、重さ85gで少し前までは「えだ柿」 として束ねて売っていたようです。 江戸時代も後期の1845(弘化2)年の王禅寺村明細帳(志村文雄家文書)によると、 村の最重要商品で年200〜260両の現金収入に。ただ隔年結果なので年平均150両となります。 江戸っ子の「水菓子」として人気があり、その後栽培は日向薬師、 大山付近までひろまりました。禅寺丸は雄花がよくつくので、花粉をとるのによいのです。 種なしの品種であっても雌花が果実となるのですが、受粉をしますと落果が少なくなるのです。 そのために利用するのです。 いっぽう県内最大の柿は大磯町寺坂地区の大玉柿。 品種は「太秋」で径110o×高さ68o重さ400g以上。 私が手にしたものはなんと525gもありました。これは農林水産省果樹試験場育成のもの。 「富有」に試験用新品種を交配・育成したものです。 糖度が16〜18とたいへん甘いのです。 原産地が長崎の品種「いさはや」はやはり450g近くまでなる大果ですが、 甘みがややたりない(糖度14)のです。
禅寺丸柿は農業協同組合柿生支店N支店長に、大玉柿・太秋、伊豆早生、 試験場12号は果樹園芸篤農家Wさんから手に入れました。 ありがとうございました。 |