このレポートは、かたつむりNo.240[2003(平成15)3.23(Sun.)]に掲載されました

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「はんだ付け」について
運営委員 道 上   定
 
2月の電気工作では「光通信機」を小5〜中3で、 小4年生は「はんだゴテ組み立て」をしました。 わたくしは「はんだゴテ…」を担当しました。 その時の少し気になることを書いておきます。
 前にもたしか書いたことがあるのですが、電気を熱にかえて使おうというのが、はんだゴテ。 でも、熱にかえたいのはニクロム線と穂先だけ。 プラグ、コードもグリップも熱が出てはこまります。 だから材料は電気を通すもの、通さないものと、はっきり分けます。 ニクロム線を巻いた筒は雲母(マイカ)という鉱物を加工したもの。 熱に強く、薄くはがれ加工しやすいので電気の絶縁体としてよく使われます。 きらら紙という風雅な和紙はこれを漉き込んだものです。
 ニクロム線とコードをつなぐ所に圧着端子とネジを使いました。 いくら部品どうしをつなぐといってもはんだ付けは出来ません。 はんだは183度前後で溶けますからね。 圧着端子は、R1.25−2というのが、今回の規格でした。 Rは穴が1つ、1.25は撚り線の呼び(つなぐ電線の太さ)、 2は使用するねじの大きさは2ミリということ。 記号があるくらいたくさんの種類があります。圧着工具というペンチを使ってカシメます。
 「カシメ」という言葉がふつうの国語辞典にはなく、説明を要しますが、 端子のパイプの部分に電線を入れ「押しつぶして固定すること」ですが、 ムカシは「リベットで穴ふさぎ」することを言っておりました。 使い込んで穴のあいたアルミのなべ・かまの水漏れ部分に、 きのこ状のリベットを突っ込み・かなづちでたたき「かしめ」ました。 そんなわけで、かしめるには大きな力がいります。 ラジオペンチで挟むくらいでは大人でもムリ。そこで先生方が手伝いました。 昔ついでですが、シリコーンガラスの絶縁チューブの前は碍管(がいかん)と呼ばれる マカロニ風の焼き物のパイプ、グリップは回転ろくろで引いた木製、 コードは現在こたつに使っている綿打ちコードを使用していたのです。
 「はんだ」についてです。科学少年団で使っているのは糸はんだです。 大きさはいろいろ。1ミリ前後がよく使われます。 おおざっぱな数字で言うと、はんだゴテの先は約200〜300度になりますが、 はんだは183度前後で溶けます。ところできみたちのはんだ付けの様子を見ていますと、 かなりの団員がかんちがいしているようです。 いちばんの勘違いははんだを溶かして「コテに乗っける、くっつけている」ことです。 これは違います。はんだがコテにつくのはいいのですが、これが目的ではありません。 部品の「端子と電線とのすき間に、はんだを溶かして埋める作業」がはんだ付けです。 はんだを溶かして埋めるには、埋めるところがきれいでなくてはいけません。 きれいとは見た目はもちろん、汚れがなく酸化膜がないこと。これがむつかしい。
 そこで糸はんだに「しかけ」がしてあるのです。 入団式のときもらったルーペを取り出し、糸はんだの切り口をのぞいてごらん。 (カッターナイフで少し斜めに切ってみよ!) レンコンのあなみたい開いていて、そこが黄色いでしょ。フラックスといいます。 金属の酸化膜を取る役目をします。ロジンといわれる「松やに」です。 これが糸はんだのレンコンのあなに・シッポまで埋め込まれているのです。 はんだが溶けると同時にフラックスが拡散し酸化物をおさえ…、とこうなるのですが、 きみたちはこれを空中で、またはコテの上でやり、 フラックスの役目をすっかり煙にして無駄にした後で部品を付けようとしているのです。 糸はんだを溶かしたときのあのけむりはフラックスで 「おそうじします」の合図だったのです。
 まず・付けるところをまとめてコテであたためる。 次にあたたまったところにはんだを押しつける。はんだが溶け出す。 フラックスが広がり、はんだが流れ出す、こういう順序です。 フラックスは一回きりですから、溶け終わったはんだには、 汚れ(酸化膜)を取る力はないのです。
 これで分かった!はんだ付け。
 さあ、次からはきみも「はんだ付け名人」さ。


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