このレポートは、かたつむりNo.285[2006(平成18)5.14(Sun.)]に掲載されました

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優しく強いモッコウバラ
運営委員 道 上   定
 
 庭に出してある植木鉢にバラの花が咲きだしました。葉っぱも花も小さく典型的な野生のもの。 野いばら(ノイバラ)。3年前接ぎ木の実験のため使った台木です。 このときは県内産の「ラブミーテンダー」(神奈川県で1993年作出)や「ラブユー」 (ラブミーテンダーから突然変異で生じた品種。1996年、秦野市の方が作出)を芽つぎしました。 翌年からかわいいピンク系の花が咲いたのですが、そのあと肥料もやらなければ虫も取らないままで、 要するに放ったらかしでいました。で、台木のノイバラとなったわけです。

 野生種のバラは北半球の亜熱帯、温帯、亜寒帯に約200種、日本には14種ほどが自生し、 そのうち県内にはサンショウバラ、テリハノイバラ、ヤマテリハノイバラ、フジイバラ、モリイバラ、 ノイバラの、6種といくつかの雑種が確認されています(『神奈川県植物誌2001』)。
 サンショウバラは南足柄市でしたか、箱根町がまちのシンボルとしているようです。
 このうちノイバラは日本全土に分布している代表的な野生種で、接ぎ木の台木として重要です。 私が使った3年前の台木は、正確には「トゲナシノイバラK2(刺なし野茨K2)」です。 このK2は神奈川県が切り花の生産性向上を目的に接ぎ木用台木として選抜したものです。 特徴はうどん粉病、根頭がんしゅ病に抵抗性があり、樹勢が強いこと。 そして嬉しいことに「とげ」がないのです。バラと言えばトゲなのに、とげがない! このことで作業性が格段に高くなるのです。

モッコウバラ

■モッコウバラ

http://flower365.web.infoseek.co.jp/22/425.html
 モッコウバラもとげがありません。そろそろ花の盛りが過ぎようとしていますが、 まだじゅうぶん楽しめます。スダレイバラともいいますが、もともと中国西南部の原産。 日本には享保年間、つまり290年くらい前に入ってきたようです。
 とすると、竹トンボもちょうどこの時期に発案されたようですから、 飛んでいった竹トンボがモッコウバラの生け垣に不時着する…。
   ぼうや 「あっ、ひっかかっちゃった。オッカァ、とってぇ!」
おっかぁ 「この子ったら甘えるんじゃないよ。モッコウバラにはとげはないよ。自分で取るんだよ」
などと、会話を交わしていたはず、です。
 そんな光景をかってに想像しながらニヤッとしています。
 で、枝の先端に散房花序をつけ、黄色の八重咲きの花を数個咲かせます。果実はでさません。
白色の匂いの強い八重嘆さもあるのですが、めったにみません。 藤沢市内では鵠沼桜が岡あたりと大庭・石川あたりでみましたが、 生け垣というには短すぎるようです。
 かなりまえになりますが、高いブロック塀のいただきに板ガラスの破片やガラスビンのかけらを コンクリで固めて囲っているのを見たことがあります。 家・屋敷をよからぬ者から守ろうという魂胆ですが、ガラスビンのかけらでの傷を思い出すと、 今でも鳥肌が立ちます。
 そこで垣根用にはモッコウバラはどうでしょうか。 とにかくあかるくてじょうぷで増やすのも比較的簡単です。 ところが5月10日の朝日新聞夕刊1面トップの見出しに「海賊版カーネーション。 日本の登録種(を)無断量産、流入5年で20倍」。せっかく売れる品種を開発したのに、 植物にも知的財産権があることが知られていないので、安いコピーがどんどん日本にはいってくる。 経済的損失が大さい、とまあ、こんな内容でした。
 花卉(き)園芸では挿し木、接ぎ木その他で比較的簡単に増やせるものですから、 バラの芽つぎなどされたのでは作出者としてはまったくもって気分悪い。 また、経済的利益に着眼すれば、なるほど他人の権利を販売すれば違反行為になる。 しかし、個人的に研究のためならどうか。そのようなことを地球規模で考えていくと、 昔むかし中国のバラが西洋で研究開発されイギリス、フランスで塵きをかけられ、 より美しくなっていく…。 この歴史は何なのか。キリンは仏さん用の、サントリーは青のカーネーションを開発し、 バブルをかき分けながら市場を広げています。ビールを飲まない私はアワ食って考え込んでいます。

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