フェール・セーフデザィン |
運営委員 道 上 定 |
エレベータが暴走し、高校生が挟まれて死亡するという事故がありました。
この事故をきっかけとして途中でドアが開いたり閉まったり、動きだしたり止まったりの、
エレベータ事故がつぎからつぎへと報道されました。まるで全国いっせいに気まぐれ運転のようすです。
なにぶん生身の身体を機械に託すのですから、暴走はまったくこまります。死亡事故は論外です。
学校では防火シャッターの事故も起き、江ノ電では赤信号のまま出発し、
ATC装置で強制停止させられ気づくという、お粗末がありました。 機械にまつわる事故のたびにいわれるのですが、 「ヒトはミスをするものだ」という前提に立たなければ事故はなんどでも繰り返すのです。 ミスしても時間経過の中でつぎの段階で修正されるか安全な側で停止する、 このようにデザインされなければいけません。 さきほどの鉄道信号では、線路故障や機器の故障が発生すると、 ただちに赤信号が点灯するようになっています。大型装置産業である製鉄所では溶鉱炉、 金属圧延加熱炉、 鍛造加熱炉など機器・部品など破損や故障したとき、 システム自体が安全側に動作するようになっています。 また、原子力発電所では稼働率を高く運転したいわけですが、 いっぽう、事故についてもぜったいに防止しなければなりません。 だから計測器や回路などの故障による不必要な炉の停止はできるだけ避けたい。 そこで炉出力を計測するための検出器・回路を3組装備し、 そのうち2組以上の作動により炉を停止するとすれば安全性も確保できるし、 炉の停止も同時にできるというわけです。 このような考え方を「フェール・セーフデザイン」といいます。 機器設計でおそわるのがフェール・セーフの基本。 たとえばタンブラースイッチ(トグルスイッチとも)の取り付け方向はつまみが上にある側がONで、 下を向く方がOFFになるように設計しなさい。でないと、 なにかが落ちてきてつまみにあたってスイッチがONになると…危険だからです。 また、電気設計でおそわるのが負帰還回路(ネガティブ・フィードバック・サーキット)。 出力信号の一部を取り出して、入力側に送り返す回路ですが、一般に増幅度は減るのですが、 発振が抑えられたり、ひずみや雑音が少なくなり安定度がよくなるのです。 いずれも不安定要素をできるだけ最小化しようという考え方です。 事故のあったエレベータは制御部のミスも機種によってはあったらしいですが、 死亡事故につながったのは異常の検知・感知、 つまりセンサーがセンサーとしての機能を持っていなかったのでは…との思いがあります。 エレベータに乗り込み、出て行くヒトや自転車を立体のものとして捉えていたのでしょうか? 点(スポット)か面として認識したんじゃないのか。立体として見ていたとは思えない。 防火シャッターにしても「防火戸」だったら回転軸が垂直だし、 板厚も1.6ミリていどですからおしつぶされるようなことはありませんが、 その代わり回転半径のぶん場所を取ります。 その点「巻き上げ式防火シャッター」は場所をとらずにいいように見えます。 しかし高熱に耐えなければならないので、見た目より重いのです。 さらにフィード・バックを同じ電源を使用しないで独立系にして シャッターの動作中は警報音とランプが点灯するようにしておれば事故は防げたかもしれません。 いずれにしても、ちかごろ世の中が荒れてきました。エレベータの暴走、 防火シャッターラッチのはずれ。赤信号で発車し、ATCで停止。儲けて悪いですか? (ならば汗してこつこつ励む肉体労働者は、それが当たり前か?)。 時間外取引で天文学的利益。ルールにないからと利子のつかない世の中で「知らないうちに」 1千万が2千4百万円になってしまった人。保険を掛けて殺す。生きたまま埋める。 見えていて見えない人の行動。見えていて見えない赤信号。儲けて悪いか?という共生の欠如。 ルールと倫理の区別がわからないオトナ。痛みが想像できない指導者たち。 ン?目が覚めたら、冷房のよく効いた南市民図書館の閲覧室のなかでした。 |