このレポートは、かたつむりNo.299[2007(平成19)5.20(Sun.)]に掲載されました

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アーティチョーク
運営委員 道 上   定
 
 5月の初め、つまりゴールデンウィークのころ大庭の耕地では代かき・田植えが行なわれます。 田植えが終わり一雨降ると少しの間ですが、静かな生命活動の予感がしてきます。 まっ平らな水面を横にたどっていくと、ごく一部の区画は休耕田だったり、畑になったりしています。 その一区画の畑になにやら山賊のような葉を茂らせた株がでこぼこと並んでいます。 どう見ても姿・かたちに日本の奥ゆかしさは、まるでない!のです。
 アーティチョーク。地中海沿岸から中央アジアにかけてが原産地らしい。 学名はキナラ・スコリムス、犬の歯というほどの意。キク科で別名チョウセンアザミ。 野生のアザミを改良して葉っぱをたべられるようにしたカルドン、 それをさらに改良してアーティチョークとなったようです。本体がなるほど仰々しいのです。 高さ1メートル50センチ、差し渡し直径2メートルにはなります。 この『かたつむり』が団員の手に届く今ごろは(5月下旬には) 紫色の頭状花が径15センチほどに咲いているはずです。 外形はアザミに似ていますが、とにかく大形。 目立つものだから切り花としても人気はあるようです。
 もっとも食材としては花の蓄(つぼみ)と花托(かたく)であって塩ゆでして、 うろこ状の萼片(がくへん)を一枚ずつ抜き取り、 付け根の部分のちょっと厚くなったところに ソースかバターをつけて歯でしごきなから食べるといいます。 残った芯の部分はナイフで切って食べます。
 塩ゆでにしてしまえば魚・肉の付け合わせ、サラダにできます。 写真の瓶詰は「肉・魚介料理の付け合わせにぴったり」 として市内のデパ地下で購入したマリネードです。 原産国はスペインです。ただ、栽培はフランスがもっとも盛んのようです。
 で、どうしてチョウセンアザミ?朝鮮半島が原産地とする根拠はいまのところ見当たりません。 朝鮮半島を経由して入ってきたという説はありますが、これもアテになりません。
 つい最近の新聞でチョウの記事が二つありました。 ひとつはチョウの好む植物を校庭や公園に植えて生息場所を増やす計画が東京・品川で始まった。 勝島運河沿いに生息している珍しい南方系の「ジャコウアゲハ」のためのプロジェクトと、 報道しています。 もうひとつは「チョウセンアカシジミ」の卵を違法に採取したとしてチョウマニアが逮捕された、 との報道です。 環境省のレッドデータブックに絶滅危慎種と指定されているチョウです。 山形県では天然記念物に指定され、保護区域内で採取したことが違法とのこと。 幼虫の食草はトネリコ、ヤチダモなど。成虫は6月下旬からら7月に現われる。 東北地方でも山形県・岩手県の、局地的に産し朝鮮半島にも分布するといいます。
 大ざっぱすぎる物言いですが、チョウセン=外国風の、異国風の、外国から来た、 程度のものではないかと考えます。
 アーティチョークつまりチョウセンアザミは、 日本には江戸時代に初めて渡来したようですが普及しませんでした。 そのあと60年前の大戦後に進駐軍のためかなり栽培したはずですが、この時も普及していません。 日本人はなんでもすぐまねして取り入れに夢中になりますが、 アーティチョークの場合はどうなんだろう。 私は少年のころサツマイモやムギを主にした農作業の手伝いをしていました。 やせた土地でもなんとか収穫があるからです。 ところがこのアーティチョークはゴボウ状の根となりますから 耕土が深く堆肥も有機質肥料がたっぷり必要です。 そのうえ1個体当たりの耕作面積が大きく、その割に利用できるのは花の蓄だけ、 とくれば日本には風土としても定着は無理かもしれません。

 チナールといってアーティチョークのお酒があります。 リキュール自体はかなりまえから飲まれていたようです。もともと食前酒として。 今はいろんなエ夫をして食後酒として愛用されているようです。
 前に戻りますが、大庭の畑に茂っているアーティチョークは大まかに2種類ありそう。 葉っぱがおおきな方はカルドンという種類でアスパラ同様に土を寄せかけて軟白した葉を利用するもの。 もう1つが花の蓄を利用するもの。私はそのように見立てました。
 栽培者のMaさんは自らを棚田探求人と称して全国を飛び回っています。 タマネギ、ブロッコリーなど取り立てのものを頂きました。ありがとうございました。


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