日本の出番だ 標準化のしごと |
運営委員 道 上 定 |
竹炭といえば、今から130年ほど前のことですが、
京都の八幡村(当時)産のマダケを細かく割いて炭焼きして喜んだアメリカ男がいます。 その男の名前はトマス・アルバ・エジソン。 すでに木綿糸を炭化した「炭素フィラメント電灯の特許許可はおりていたのですが、電灯の寿命をもっと延ばしたかったのです。 そこで竹の利用となったわけ。 なにしろ鉛筆の芯ほどの太さですから「サイシン」の注意をはらって取り扱わねば、すぐに折れてしまいます。 大の男がほそい糸のようなフィラメントを相手に、静かに格闘している姿はなんとも愉快ではありませんか。 エジソンは目的のためには何でもするタイプ。だから発明王になれたのでしょう。 じつは電灯の開発は、発電から送電、電灯照明、そして電飾まで、今でいう発・送電網(パワー・グリッド)の構想を持っていた、 その末端の一つでした。フィラメントが切れたらすぐに取り替えできるように口金は「ねじ込み式」。いまのE26タイプ。 26は口金の直径、Eはエジソンに由来します。他には一時エジソンに協力したスワンによる「差し込み式」があります。 差し込んで90度まわして固定する方式。プリントゴッコのフラッシュ・バルブがそれです。 発電機についても大きな成果をあげつつあったのですが、彼は直流推進派。 ほどなく入ってきた交流派のニコラ・テスラと衝突、テスラは2年で去っていきます。 テスラは交流インダクタンス・モータを作り、商用交流発電システムを最初に完成させた人。 物理の教科書に磁束密度の単位としてテスラがでてきます。 最近、トヨタと電気自動車のテスラ・モーターズが提携した、との報道が流れました。 テスラもスワンもエジソンに劣らず科学・技術のすそ野が広い人たちでした。 その後タングステンが炭素の3倍ほどの効率を持つことが分かって、いっきょに寿命も明るさも進歩し、 その他の日本の技術も大きな力になり、現在につながっています。 その白熱電球の製造は、我が国では東芝の照明事業の草分け・白熱舎が120年まえ、日産10個位ではじまりました。 東芝の資料によれば、最盛期の昭和48年(1973年)には年間7800万個も生産。 その間蛍光灯(直管)も開発されたのですが、はじめは点灯まで時間はかかるし、点いてもボヤーとしてるし、 「まるでケイコウトーのようだ」と椰楡され、評判はいまひとつ。が、消費電力で明らかに白熱電球よりまさっています。 それから、サークラインタイプ、電球タイプと次ぎつぎに開発され、改良が重ねられて、格段の商品に仕上がっているのです。 そして今、白熱電球は製造中止の方向です。 地球温暖化防止に向けた省エネ、二酸化炭素削減のニーズがいよいよ高まってきたなかで、 LEDの性能が飛躍的に良くなってきたからです。 LED電球は十分に実用の域に入っています。あとは価格の面だけ。 もっともLED電球の設計寿命が40000時間と聞けば、あまり無理は言えませんが。 一般白熱電球が1000時間、電球形蛍光ランプが6000時間となっていますからね。 直管形のLEDランプについてはすでに外国で検討・製品化されていますが、デリカシーにかけていると言うか、 細かいところが行き届いていません。 安心・安全設計になっていないのです。欧州照明器具工業会(CELMA)や、米国エネルギー省(DOA)の委員会報告では、 ランプの性能評価を行い、光出力、光色、配光特性などが不十分な性能で、蛍光ランプの代替えとして推奨しない、としています。 日本の出番です。技術力はあるのです。デリカシーもあります。構成力・組織力もあります。 ないのは地下資源、説得力そして情熱、です。 新聞報道によれば、国連環境計画が1日、メキシコで行われている「気候変動枠組み条約締約国会議」(COP16)で、 次のように報告しました。 「電力の19パーセントを消費している照明器具につき100カ国を調べたところ、 エネルギー効率の悪い白熱電球が売り上げの半分以上を占めていた。 これを電球型の蛍光灯やLEDなどに置き換えれば、電力消費の2パーセント以上を削減でき、 二酸化炭素の排出量を少なくとも1パーセント削減できる。」 日本の得意とする分野ではありませんか。「新型口金付き直管形LEDランプシステム」が日本電球工業会でこの10月制定されました。 どうか、国際競争力のあるものに育てるため、フンバッテいただきたい、そのように強く思います。標準化の仕事は日本の役割です。 |