物があふれ、こころが・・ |
運営委員 道 上 定 |
東京電力福島第一原子力発電所の放射能洩れで、原則「立ち入り禁止」となっている20キロ圏内の「警戒区域」で、
去年の3倍の窃盗が発生しているといいます。空き巣、ATMからの窃盗が多いようです。
事務所・店舗も荒らされ、洋服など着ることができるか腕を通し脱ぎ捨てたままがあったり・・。
もっともこれは「使用窃盗」と言われるもので犯罪とはなりませんが。 ATMの機械を電気のこぎりで壊すのも目立つといいます。 その際コーナのコンセントに電気のこぎりのプラグを差し込み利用すれば「使用窃盗」ではなく電気の「窃盗」罪にあたります。 えっ?ちょっと待って!刑法では他人の「もの」をこっそり盗むことを窃盗罪と言うのでは? そして民法では「もの」とは有体物、つまり形のあるものを言うそうだから、電気はモノとは違うじゃないの? 基本はそのとおり。ですが、ここでは「動かせて、管理ができるモノ」であれば、有体物でなく、電気でも窃盗罪が成り立つのです。 「電気は、財物とみなす」との規定も刑法に盛り込まれています。 ケータイのACアダプタをコンセントに差し込んだら、お見込みのとおりです。 それにしても被災者が先も見えなくて苦しんでいるのに、被災地に入って盗みをはたらくとは! 1877年(明治10年)7月、アメリカ東海岸から横浜に上陸。江の島目指してやってきた青年海洋生物学者がいました。 貝類、腕足類の採集・研究が目的でした。名前をエドワード・シルベスター・モースと言います。 島では網小屋を借り上げ臨海実験所とし、宿はEBS旅館にとりました。 「大事な財布だから、預かっといて」とモースさん。 「そこのお盆に載せといて」と、宿の主人。ええっ?あ、そう。と、そのときは思った。一仕事終わって戻ると財布はそのまま。 二日経っても、そのまんま。 「だいじょうぶ。たしかに預かってますから』と主人。 結局引き取るまで財布はそのままで、ぶじモースさんの手へ。モースさんは唸りました。 よそではちょっと目を離したすきに、盗まれるのに。どうだ、この江の島では。人がこんなに行き交うのに、盗まれないなんて! 感激ひとしおのモースさんでした。 いつの頃からか物があふれ、こころが足りなくなりました。 洋服のツギが、靴下のツギが視野から消え、他人を思うポケットのふくらみも消えて、みんなこぎれいになりました。 |