このレポートは、かたつむりNo.382[2013(平成25)03.31(Sun.)]に掲載されました

戻る

半熟の「鶏卵検定試験」A
運営委員 道 上   定
 
 空気がゆるみ、光りの粒が軟らかくなってきました。足元から行楽シ−ズンの到来です。 「長屋の花見」では心優しいのか、それとも見栄っぱりなのか、大家さんが店子を誘って桜を愛でる趣向です。
 酒の肴は「かまぼこ」と「たまごやき」のつもりの、大根とたくあん! お酒は茶を煮だして薄めたオチャケ1そして毛氈(もうせん)と呼ぶムシロの敷物。これだけ。じつに質素で風流な一団です。 場面の展開は、落語ですから・・・。
 江戸時代も末期です。うまくゆけばたまごは庶民の手に入ったようです。 「東海道中膝栗毛」でも「玉子ふわふわ」という名で玉子焼きが出てきます。
 さて、前回のケイランケン、いかがでした?

Q1(生産高第一位は? @中国 Aアメリカ B日本)  は@。中国は巨大な国、生産量もケタがちがいます。 2382万7千トン(37.5%)二位=アメリカ541万2千トン(8.5%)、三位=インド341万4千トン(5.4%) そして四位=日本251万5千トン(4.0%〉が年間に生産されています。 鶏卵の生産・消費は一対になっており、消費も中国、アメリカ、日本の順です。 日本国内の年間の生産量を見てみますと、@茨城県189261トンA千葉県188883トンB鹿児島県167301トンと、なっています。
神奈川県では21518トンで、藤沢市では飼養戸数2戸・3271羽です。

Q2(消費第3位は日本ですが、国民1人あたり年間何個使っているでしょうか。@234個 A345個 B456個)  はA。国民1人当たりおおよそ1日1個。

Q3(ふつうの家庭がふつうにたまごを食べるようになったのはいつから? @明治時代 A大正時代 B昭和時代)  はB。第二次世界大戦で、敗戦を迎えたとき、おおかたの日本人は食べるものに苦労しました。 大都市ほど食料がありませんでした。たまごどころの話ではありません。 「お国のため」と言う主食に、「我慢」というふりかけをかけて済ます毎日だったのです。
 昭和の30年代までのたまごは、ていねいに埋めた籾がらの中から取り出し、新聞紙にくるんで手渡したものでした。 病気見舞いに喜ばれたものです。

Q4(たまご1個の標準の重さは? @50グラム A60グラム B70グラム)  はA。たまごのサイズは農水省制定の「鶏卵の取引規格」として指導基準があり、次のように決めています。
  LL:70〜76グラム   L :64〜70グラム   M :58〜64グラム
  MS:52〜58グラム   S :46〜52グラム   SS:40〜46グラム

Q5(黄身はひよこのどの部分に? @くちばし Aあし Bおもに筋肉)  はB。ひよこはたまごの範囲内の成分でひよこに育ちます。黄身も白身もほとんどは筋肉に。

Q6(「金の卵」つて?  @求人難の高度経済成長期に、集団就職などで、将来を期待された若い人たち  A合金で鋳造されたたまご  B金曜日にとれたたまご)  は@。AもBも間違いとはいえませんが、ふつうは@として使います。

Q7(「ミックスたまご」つて?  @異なるサイズのたまごが一つにパックされたもの  A黄身と白身がすでに撹絆され、販売されているもの  B有精卵)  は@。Aは加工・業務用として「全卵」一次加工製品と呼んでいます。Bについて際立った栄養上のメリットはないようです。

Q8(「温泉たまご」とは?  @茄だったばかりのアツアツのたまご  Aたまごを68〜70°Cのお湯の中で30〜40分茄でた、黄身は硬く白身はまだ軟らかい、半熟のたまご  B雪が舞う屋外の温泉で、頭だけ出して浸かっているニホンザルの子どもたち)  はA。ニホンザルの子どもたちが頭を並べて湯に浸かっているのを見ると、茄であがったときの動きがどうなるのか、たのしくなります。

Q9(、殻を割らないで「ゆでたまご」と「なまたまご」を見分けるには?  @光にかざして透明感があるのが」なま」、ぼけたような輪郭は「ゆで」  A水の中で速く沈むのが「生」  Bコマのように回してよく回るのが「ゆで」)  はB。とにかく、試してみて。条件をいろいろ決めて、何回も繰り返してやってみてください。

Q10(中国の大道芸で、壊れやすい「たまご乗り」を見せてくれます。いったい何個あれば60キロのおとなが乗っても大丈夫でしょうか?  @10個 A20個 B30個)  は@。ぶつけたり、落とすとすぐに壊れ、白身・黄身がほどよい速さで流れ出てきます。スローモーションやアニメにぴったりの材料です。 ところが外圧に対しては扱いをうまくすると、縦方向には6〜7キログラム、横方向には5〜6キログラムまで持ちこたえます。 つまり10個パック詰め1パックで、体重70キロゲラムのおとなが乗ってもつぶれない!のです。 申し訳ないけど、私はまだ試していません。

Q11(ひよこになるもともとの細胞はたまごのどこにあるのでしょうか。  @カラザという、より合わせた糸のようなものの黄身の付け根  A黄身のド真ん中  B黄身の表面にある胚と呼ぶところ)  はB。たまごの大部分は胚の部分の細胞分裂でひよこに成長していくための、材料です。 カラザは卵黄をたまごの中央に保つためのばね。卵黄のド真ん中をラテブラと言い、胚までつながっています。

 1個60グラム、15円前後。たまごは煮ても焼いても、混ぜてもおいしく、もちろん生で熱いご飯に落として醤油をたらし、 少しかき混ぜてほおばり・・・、これまたうまいのです。
 もっとも、欧米人はたまごを材料としてはたくさん使うのですが、ナマで食べることを嫌がります。 頻繁に食中毒を経験したのでしょう。
 同時に欧米と日本の衛生事情を考えると、 日本の「きれい好き」についてアメリカ人生物学者・エドワード・シルベスター・モースの『日本その日その日』がおおいに参考になるでしょう。 たまごにせよ、さかなにせよ、寿司にしても純粋にナマそのものにうまさを見いだす食文化は思わぬところにつながるのです。

戻る