エネルギー政策 |
運営委員 道 上 定 |
先月(4月)12日の内閣定例閣議で、電気事業法改正法案の閣議決定がなされ、法案が提出されました。やれやれ、です。
10日前の2日、電カシステムの改革につき基本方針が定例閣議で了承されたとの報道で気を揉んでいたからです。
それと言うのも内閣制度発足以来議事録文書が作成されていないから、です。
つまり、120年以上「どういう顛末」だったか、閣議での会議の経過はわからないのです。政治は発言と記録の世界、のはず。
そこに肝心な記録が残っていないとは思っていませんでした。 東日本大震災と巨大津波に原子力発電所事故のとき、状況把握と対処の妥当性について、 内閣の「意志決定のプロセス」が問われましたが、記録がなく大問題になったのです。 原発事故からようやく記録を残すことになったようです。もっとも、文書の公開は今から数十年先でしょうが。 この12日の法案は、地域を越えて電力を融通しあう広域系統運用機構を立ち上げることが、おもな目的です。 つぎの段階で新参入の「自然エネルギー発電会社」の育成・促進をはかる。 そして最後に、現在の電力会社の送配電部門を分離して別会社にする、そのような構想にもとづいて行われています。 順調にいけば2015年に法案提出で、18年には発送電分離ができるはず、です。 ねらいは競争の原理を導入し自然エネルギーを増やすと同時に、電気料金の自由化です。 よいことづくめのようですが、競争の結果大きい会社だけが残り、儲からない・僻地・小島などでは料金が上がる、など心配されます。 ただ、原子力発電ではコスト計算からみても採算が取れないことがはっきりしており、撤退を余儀なくされるでしょうし、 それ以前に放射性廃棄物の処理方法が見出せない現状(たぶん将来においても無理・・)では退場願うしかないでしょう。 生き物の生活環境に放射能との共存はあり得ません。 放射線照射は地球誕生のあと、生命現象発生時の一回きり有効で、その遺伝子の記憶は二回目以降を許しません。 自然エネルギーの太陽光発電、風力発電、波発電、小水力発電、地熱発電・・・など、身近なエネルギーを利用しましょう。 そして原則「地産地消」です。 自然エネルギーは不安定だ、容量が小さい、コストが・・・と、もっともらしいことをはなす人が多い。 あなたはどこに足場を設けて見ていますか? 今回提出された「広域系統運用機構」の機能はそれを先取りした改正案でもあるのです。 日本の国土は北海道から沖縄・南西諸島まで3000キロメートルにわたって弓状に横たわる、冷帯から亜熱帯までの気候を持つ、 森林地帯が8割近くの、じつに自然豊かな国土なのです。しかも四季があって周辺は海。くにざかい(国境)も海。 さらに気象通報を聞いてわかるように、同じ時刻に日本全土の風が一方向、同じ風力だったり、天候が全国で雨だったり、 あるいはあっぱれだったり・・・などということはほとんどありません。 先月4月19日は北海道では雪1、沖縄では23度だったとか。 蛇足ですが、日本の工業生産品の耐久性が良いのはこのような背景があるのです。 なにしろ、日常的に「耐候試験」をやっているようなものですからね。 データの取り方・組み合わせ方で思わぬ答えやアイデアをいただける、と言うわけです。 スマート・グリッドの手法を使えば発電の不安定など問題になりません。むしろ送配電の領域では開発の有望な部分です。 4月16日総務省が発表しましたが、日本の総人口1億2751万5千人。 65歳以上が3079万3千人、前年から104万1千人増加。が、人口は28万4千人減少、となっています。 少子高齢化が進み、同時に人口減少も伴い年齢構成の重心が高齢に移動しつつあり、安定期を迎えるのです。 お分かりのように、いま以上に電力を必要とする要素は見あたりませんし、ほとんどの原発停止の中で最大電力需要の夏場も去年は乗り切りました。 欲望むき出しの「市場原理」は日本文化の風土には向きません。伝統芸能や「基礎科学」は、はるか対極にあります。 日本は青年期を通過したのです。 |