このレポートは、かたつむりNo.395[2014(平成26)03.23(Sun.)]に掲載されました

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想像以上の破壊力
運営委員 道 上   定
 
 逃げ足の早い二月だけあって、2、3日のしっぽを切りはずして28日で、さっさと過ぎ去りました。
 で、今は三月。6日の「土の中のむしたちが深い眠りから目覚め、動き出す」と言う啓蟄(=けいちつ)も過ぎ、 21日の春分の日ころから日の光に力が加わるのでしょう、生き物の呼吸が聞こえてきます。 「秋分の日」と並んで国民の祝日なのですが「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」秋分の日に対し 「自然をたたえ、生物をいつくしむ」のが春分の日。 自然を意義深く位置づけるのはこの春分の日とみどりの日、そして海の日です。
 もっとも近頃は「山の日」の休日をつくろうと山ジイや山バァが動いています。
 3月25日は「電気記念日」。1878(明治11)年3月25日、中央電信局開業式後のパーティは工部大学校(東京大学工学部の前身) の大ホールで行われたのですが、そのとき我が国ではじめて電灯による照明を披露し驚かせました。 グローブ電池50個を使ってのアーク灯の点灯でしたから操作指導するエアトン先生、学生である助手も接続箇所や電極の維持・調整に走り回ったのでは。 この日を記念して日本電気協会が1927(昭和2)年に決定し、翌年から実施しました。
 タングステン電球はアーク灯にほんの少し遅れて実用化されたのですが、まえに紹介したとおりです。 交流の特徴が認識されるようになって、とりわけ送・配電に有利と分かってからは急激な電気の普及となりました。 江ノ島電気鉄道会社も自前の発電所を川袋あたりに建設し鉄道への利用はもちろん、余った電気を近隣の建物に売り歩きました。 余剰電気は発電当初から問題でした。貯められないからです。最大使用量は確保しながら、無駄のない運転は一本調子の出力が望ましい訳です。 水力、火力はコントロールが比較的しやすく、需要の変化に対応が容易なのです。いっぽう、原子力発電は微調整を伴わない一本調子の運転に向いています。 そのため調整用として[揚水発電所]を作ります。理屈を考える暇なヒトには経済性を別にしておもしろい発電所では、あります。 もっとも、原発は安全・安心を約束できる発電ではありません。むしろ核燃料を作るとき、運搬するとき、燃やすとき、細心の注意が必要なのです。 放射能の絶対的管理が要求されます。その破綻が3年前の東日本大震災と、福島原発のメルトダウンでした。
 避難、汚染・除染の重大な問題は集約されるほどに濃縮され、これからはますます解決を個人化されていくことでしょう。 国の姿が遙か彼方にかすんできました。
 国では先月、エネルギー基本計画の政府案を決めました。原発を「重要電源」と位置づけ、安全と確認した原発は再稼働する。 新たな原発も建設可能と決めました。原発は終日連続運転・発電する「ベースロード電源」とし、石炭火力発電とともに位置づけることにしたそうです。 そして、天然ガス火力は「ミドル電源」、石油や揚水発電、太陽光・風力などの再生可能エネルギーは「ピーク電源」と決めたようです。 (電力会社は以前からそのように決めています)。
 原発は地球温暖化や電力の安定供給のため必要だ、と。核燃料も放射性廃棄物も適正に管理できていないし、今後も無理でしょう。福島はすんだの?
 とそのように思います。大震災・原発事故がとがったところから風化しはじめた現在、野ざらしの大量の放射性廃棄物ビニル袋も風化し、 洩れでてくる問題は私たちの生活のあらゆる場面で決断を要求するでしょう。
 「庶民の科学」は無気力なのでしょうか。

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