センダンとショウブ | |||
運営委員 道 上 定 | |||
センダンの花は必ず端午の節句には咲きそろう、と聞いていました。 端午の節句とくれば5月の子供の日ではありませんか。武者人形を飾り、ショウブを軒下に差し、菖蒲湯をたて、 男の子の健康を願ったのがはじまりだそうです。女の子のひな祭りと対をなすものです。 ショウブとハナショウブはよく混同されますが、別の植物です。と言うことはショウブには花は咲かない?いえ、咲きます。 黄緑色の肉穂花序で花包1枚をともない5月ごろ咲きます。花としてはまったく地味で目立たないのです。 マムシグサやウラシマソウと同じサトイモ科です。
この「長井古種のハナショウブ」。 山形県長井市の「長井あやめ公園」には園芸種であるハナショウブの原種・ノハナショウブに近いと言われる長井古種34品種、 そのうち13品種が長井市指定天然記念物として栽培されています。 以前に科学少年団の団長・運営委員長をつとめ、科学とその周辺領域の発展に多くの時間をさいて下さった、 現在は顧問の高山義則先生は山形県白鷹町にお住まいですが、その白鷹町には大字〔菖蒲〕の地名があり、 南隣りの長井市には事実上〔ハナショウブ園〕である「長井あやめ公園」があり、にぎわっています。 となると、白鷹と長井は深い関わりがほかにもありそうです。 神奈川県廳建設の顧問をつとめた佐野利器さんも白鷹町の出身です。旧制二高から東大工科大学建築科に進み、 耐震構造建築工学の草分けとなりました。破天荒な考え・生き方は羨ましいかぎりです。 1956年鎌倉市で亡くなりました。76歳でした。 さて、センダンに戻ります。裸木に毎年たくさんの実を鈴なりにつけて冬を越すので印象に残ります。 春になって風の強い日、ひとつ残らず実を落とし、やがて幹がみどりを帯びてくると、枝先に新芽が顔を出す。 そのあとの展開の早いこと!激変の世界です。 ところがまもなく4月も終わるのに花は咲かない。 よそのお宅の庭を、無粋な男が垣根越しにのぞき「まだ咲かない。変だな?」なんて、ハタから見ればこれこそよほど変。 でもね、いつのぞいても人の気配がしないし、(人がいればあいさつするよ)、だいいち庭の手入れがされていないようだし。 枯れ木にはツタが絡み、そのまま。
『枕草子』には風情のある木の花のひとつに「センダン(=あふち)の花」を挙げています。 5月5日の端午の節句には、花がいっせいに咲きそろうのが「じつにみごとだし、おしゃれだ」と。 本当にそうか、気になっていました。ところが4月も中旬になっても代わり映えせず視野のぞとへ。 そしていきなりひと月足らずで「木のさまにくげなれど、棟の花、いとをかし。かれがれに、様異に咲きて、かならず五月五日にあふも、をかし。」 木はスタイルわるいけど、花はチョーしゃれているわ。干からびて、ちょっとへんな咲きよう。 でも必ず5月5日の節句に咲きあうのは気が利いてるわね、と清少納言はよくみております。 随筆『枕草子』は1000年も前に書かれたものですが、他人の視線を意識しながらつづられた気配で、 洗練された文体はそこからきているとひとり合点し、「いとをかし」と、このへんで筆をおきます。 |