常識を打ち破ったノーベル賞 | ||||||
団員保護者 S.T. | ||||||
理科の教科書を見ると、電気を流すものと流さないものが書いてある。電気を流すものは鉄や銅などの金属で、
電気を流さないものは木やプラスチック。電池と豆電球の間に鉄や銅を入れれば電球が光り、
木やプラスチックを入れれば電球は光らない。だから、金属は電気を流し、プラスチックは電気を流さない。
めでたし、めでたしとなり、テストはこれで正解。 ところが、プラスチックに電気の流れない別の物を加えると、電気が流れるから驚きだ。しかも、 ほんの微量加えただけでも鉄よりも電気を通すから、魔法をかけたようなもの。 別の物を加えることをドーピングといい、スポーツ選手が記録を出そうと薬を飲むドーピングと同じ意味。 少しの薬で大きな力が出るのは、プラスチックも人も同じようだ。そして、さらに驚いたことに、 これを発見したのは僕らと同じ日本人の白川博士ということ。 博士はこの発見に対し2000年にノーベル賞も授与されている。 白川博士は東京工業大学で助手をしている時、アセチレンというガスから粉を作る実験をしていた。 ある日、博士は実験の分量を間違えてしまった。するとどうだろう。これまで、 粉しかできなかった物が紙のような状態(フィルム状)に出来上がった。このフィルムは金属のような光沢を放っており、 電気が流れるのではという直感が働いた。数年後、ここに少しの別の物を混ぜる実験をしたところ、多くの電気が流れ、 電流計の針は振り切れてしまった。この発見は、プラスチックが電気を通さないという常識を覆すものだった。 博士の理論は世界中にインパクトを与え、電気を流すプラスチックの研究は急速に進んだ。 4年後には下敷きのようなプラスチック電池が作られ、10年後にはプラスチックは鉄より電気を流すようになっていた。 さらに、電気を流すことで光を放つプラスチック(プラスチック材)が見つかった。エレクトロ・ルミネッセンス(EL) と呼ばれる現象で画期的な発見だった。電気が流れる道にこの材料をつなげば、それだけで光り、 豆電球も何もいらないのだからである。光を放つプラスチックを液体に溶かして線を書けばその線が光り 「へ」の字を書けば「へ」が光ると、いう具合だ。しかも、材料を選ぶことで赤、緑、青の好みの色が得られる。 このようなプラスチックは、有機ELと呼ばれるようになった。 今、携帯電話の画面使われているのは、ほとんどが液晶と呼ばれるもの。 後に電球があり、その光を遮ったり通したりして画面を表示させている。 だから、斜めからみると見えにくかったりする。これに対して、有機ELの画面はそれ自体が光っているので、 斜めから見ても美しい光を放つ。今後の表示画面として精力的な研究が行なわれ、画面が2個ある携帯電話で、 小さい方の画面として使われるようになった。さらに、有機ELを使ったテレビの研究が盛んに行なわれており、 17インチサイズの大きな試作品も作られている。 ELの美しい画面を見ると、科学の素晴らしさを実感する。 白川先生のように素晴らしい発見ができるようガンバッテ欲しい。ノーベル賞も夢ではない。(団員 父)
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