このレポートは、かたつむりNo.253[2004(平成16)2.8(Sun.)]に掲載されました

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冬の森を訪ねて(1月の活動から)
運営委員 鈴 木 照 治
 
ベニシダ全体
■ベニシダ全体
ベニシダ拡大
■ベニシダ拡大
 この冬は、本格的な寒さの訪れが、例年より遅くなりました。 前年(2003年)の秋の紅葉は、名所とされる山間部では例年並みしたが、 神奈川の平地ではかなり遅くなりました。 私の家のイハモミジは年がかわってもまだ紅い葉をつけていましたし、 散在ヶ池公園に1月2日に行ったときには、見事に紅葉した葉を面につけたモミジが見られ、 近くの人の話では、今年はとくに紅葉が遅いとのことでした。 一方、新聞では小田原の梅が早くも咲き出し、例年より2週間早いということです。 冬に入る頃の温の訪れが不規則であったため、植物の冬支度に狂いが生じたのではないかと、 運営委員の話題にも出ました。 さて、自然の森の観察は、冬から始めるのが、一番です。 その理由は、まず、常緑樹と落葉樹(正しくは夏緑広葉樹)が一目で見分けられ、 ほとんどの草が姿を消しているので、その森を特徴づけている重要なメンバーを見つけやすいこと、 とりわけ、森林性の常緑シダ類を観察しやすいこと、などがあげられます。 ここで常緑樹というのは、冬も緑の葉をつけてる「ときわぎ」で、 庭の木では、ツバキやツゲ、カナメモチなどがおなじみです。 野山に多いサカキ(関東ではヒサカキ)は身近な縁起の良い「ときわ木」で、神前に供えられます。 サクラやケヤキのような、秋に葉が落ち、冬は枯れ木のように見える落葉樹は、 常緑樹林の中には、あまり見られません。 多くの落葉樹は林の中では、こどもが育たないからです。 もっとも、1本でも木を切って日の当たる場所をつくると、そこには草がたくさん生えて、 中に混じって落葉樹の子苗も出てきます。 一方、常緑樹林の中は薄暗く、冬にはシダ類の他はほとんどの植物は見られません。 落葉樹林の中には、シダ類はほとんど生えず、かわりにササ(関東ではアズマネザサ)が繁殖しますが、 これを刈り取れば、多くの草が生活するようになります。 3,40年前まで多かった「里山」のような落葉樹林の維持管理には、毎年の下刈りが必要です。 常緑樹林以外でシダ類を見つけようとすれば、北に面したガケや急斜面を探せば、断片的に見ることができます。 藤沢には常緑性のシダ類がたくさん生えているところは少なく、 江の島か新林公園の奥まで行かないと常緑シダの群落はありません。

イノデ全体
■イノデ全体
イノデ拡大
■イノデ拡大
 1月の活動で、六国見山は落葉樹が多く、シダは少しでしたが、山を出てから、 道にそったガケにコモチシダが見られました。 子苗を生ずるほどの大きい葉は1枚しか見つかりませんでした。 散在ヶ池森林公園の暗い森に入ると、まずベニシダがたくさんありました。 回復途上の森(落葉樹林)のところでは、シダがなく、森の中の石垣にヤブソテツがたくさんあり、 常緑樹林に入ると、イノモトソウ、コモチシダ、ジュウモンジシダ、イノデ、リョウメンシダと、 まるで見本市のように多くのシダが見られました。 ベニシダとイノデは藤沢でもよく見かけましたが、近頃は少なくなっています。



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