2月に目をひくキブシの花 |
運営委員 鈴 木 照 治 |
暦の上では春とはいいながら、2月はまだまだ冬といってもいいくらいの寒さです。
新築の目立つ住宅地を歩くと、家々の玄関回りには、パンジー、ビオラ、プリムラ、
シクラメンなど外植え草花が、この寒さの中で、元気いっぱい咲いています。
昔は冬の間は、花屋か温室でなければ、見られなかった西洋草花が、今では外植えで、
いくらでも見られるようになりました。品種改良の進歩、都市化によるヒートアイランド現象の拡大、
地球温暖化の進行などの諸条件が総合された結果と見ることができるでしょう。目を外の自然に向けて、
2月の野山を歩くと、日だまりには、オオイヌノフグリのかわいい花を見つけることができます。
2月に咲く花といえば、誰でも「梅の花」を思いうかべます。しかし、このどちらも外来の植物です。
日本古来の植物で、2月に咲くのは、日当たりのよい田園で、ハコベやナズナ、タビラコ、セリなどいわゆる
「春の七草」がようやく花をつけはじめるところで、山の木では、マンサクとキブシですが、
藤沢ではマンサクの自生はほとんどなく、目にするのは庭に植栽されたものばかりです。 ところで、藤沢の地名を冠した植物として、クゲヌマラン、エノシマイチゴ、 エノシマヨメナの3種があると、以前に書きましたが、もう1種 エノシマキブシと呼ばれるキブシの一種があります。 もっとも、これはまたの名で、正式にはナンバンキブシです。この 一名エノシマキブシはキブシの一変種で、葉および果実が、 通常のキブシよりはるかに長い(2倍以上)ものをいいます。 ふつうのキブシは内陸部の山野に自生するのに対し、江の島はじめ、関東南部の海岸近くのものは、 たいてい枝が太く、葉と果の長いナンバンキブシです。どちらのキブシも、山野では、 ガケに近い急斜面によく見られます。秋の終わりに落葉したときから、 ほとんどすべての枝先に小さなつぼみの付いた花穂を下げます。冬中この状態ですから、とても目立って、 あれがキブシだとすぐにわかります。つぼみは冬の間に少しずつ大きくなり、2月になると、 他の山野の木に先駆けて、丸いつぼみのさきにクリームがかった白色の花びらをのぞかせ、 やがて下向きにつぼ状の小さな花を咲かせます。連なって咲く小花は、まるで図案のスズランのようです。 直立する木でありながら、フジのように花穂が下がるので、キフジ、それが転じてキブシとなったというのが、 その名の由来といわれます。藤沢に自生するキブシは、見たところすべて エノシマキブシ(ナンバンキブシ)と思われますが、 2月に咲くこの花は、春がもうすぐそこまで来ていることを知らせてくれます。 |