以前、街の中では野草が見られなくなったという話を書きました
(かたつむり202号「野草はどこへ往った」)。
その後、あちこちを歩いて見るたびに、ますますそのことを強く感じるようになっていきます。
毎年春に活動する「少年の森」でも、カントウタンポポがあるにはありますが、生えている環境から見て、
昔からある日本在来のカントウタンポポらしくはなく、
セイヨウタンポポの遺伝子が入った外見だけのカントウタンポポではないのかという思いが断ち切れません。
あのあたりの野草も、この20年のあいだにかなり少なくなったようです。では、どんなところが、
野草が生えていそうな環境なのか、その場所を見つけるための、わかりやすい目印があります。
それは、オオイヌノフグリの花を見つけることです、早春の日だまりに、いち早く、
空色の小花をつけるこの植物は、明治初年に帰化したとされる外来植物です。
30年ほど前までは、いたるところの空き地で、この花を見られたものですが、近頃の市内では、
生育場所がせばめられているようです。それでもよく目立つ花ですから、咲いていればすぐわかります。
もし、この花を発見したら、近くに野草が見つかるかもしれません。
オオイヌノフグリは雑草の部類に入りますが、最近の私は、この花を見つけると、
珍しい野草を見つけたような喜びを感じます。日本古来の野草に近い性質の一つは、虫媒花であることです。
同属で近縁のタチイヌノフグリは、多くの雑草がそうであるように、自家受粉で種子をつくるので、
悪条件の場所にも生育できるのに対して、オオイヌノフグリは、地域の昆虫とともに、
在来型の野草と同じ生態系の中で生活を営んでいるものと想像できます。だから、
近くにカントウタンポポやホトケノザのような、在来の野草が発見される可能性があるわけです。
私の見つけたオオイヌノフグリの近くには、花の咲いている野草は見つかりませんでした。
離れたところに、ナズナやスズメノカタビラ、畑の中にハコベが見つかったくらいです。
在来の野草の多くは、ソメイヨシノが開花し、モンシロチョウ(最近見かけるようになった)
が飛ぶ4月になって花を咲かせるので、3月はまだ目立ちません。これらの野草が咲く頃には、
オオイヌノフグリは、まわりの草にかくれて目立たなくなります。ですから3月の今、
オオイヌノフグリをマークしておくことが、4月になって咲く、
今では珍しい野草を見つける手がかりになるというわけです。
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