夏季活動2日目の午後、オオトチ沢をさかのぼりました。
かなり歩いて沢の流れが近づいたところで突然林道が途切れ、
2〜3mのくずれやすい急ながけを降りると、
そこは堰堤(えんてい=土石流をくいとめる丈夫なコンクリートの堰=せき)の上流部で、
小石や砂がつもった広場で、周囲と違って日当たりがよく草も茂っていました。
中でも目立ったのは、一斉に咲いた多数の白い花、藤沢でも空き地におなじみのヒメジョオンでした。
ここでは、2ヶ月近くも遅い花盛りです。しかし、よく見ると生え方が藤沢で見るのと少し違います。
街中で見かけるヒメジョオンはほかの同じ草丈の草とはほとんど共生しないのに比べてここでは、
他の草に混じって、少々遠慮しながら、仲良く生活しているように見えました。
そこでは写真を撮るだけで、まだ気がつきませんでしたが、翌朝、散歩をしたとき、
舗装道路の端に生えているヒメジョオンが藤沢と同じ生え方なのに気づいてよく見ると、
葉の幅が中ほどが広く、ふちに凹凸のあるふつうのヒメジョオンであるのに対し、道から少しはなれて、
他の草と混じり合っている方は、葉の細いヘラバヒメジョオンであることにやっと気がついたのです。
昔、植物の勉強を始めたころは、ヤナギバヒメジョオンというのが山地に多いということでしたが、
その後、山に行ってもあまり関心をもって観察してこなかったので、気がつくのがおくれたのでしょう。
葉が細く、葉のふちにギザギザがないのは、ハルジオンもそうですが、
ハルジオンは葉のつけ根が茎を抱くようになっているのが特徴です。
ヘラバヒメジョオンの葉はつけねが「柳の葉のように」ほそくなるだけで茎を抱きかかえません。
昔の図鑑には、ヤナギバヒメジョオンとして出ていました。
この関東の山地に多いというヘラバヒメジョオンがオオトチ沢の河原に生えていたわけです。
高原を歩いていると、道端にヒメジョオン、そこから2〜3歩、
草地に入ったところにヘラバヒメジョオンが生えるといった光景も見られるようです。
これらのことは、数十年も前に、長野県の生態学者が、蓼科高原で調査して、明らかにしていることを、
あとで教えられました。
小さなことでも、自分で発見したことは、それなりの喜びですが、むかし、そのことを追求し、
詳しく調査し、発表した研究者がいたということを知るのも、時を超えて分かり合える喜びです。
なお、花期が1ヶ月ちがうとされるハルジオンとヒメジョオンが仲良く同時に並んで咲く姿を
湘南台公園で見たのもこの6月でした。
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