このレポートは、かたつむりNo.294[2007(平成19)1.14(Sun.)]に掲載されました

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冬に咲くビワの花
運営委員 鈴 木 照 治
 
ビワの花、12月22日河津町
■ビワの花、12月22日河津町
花はないがよく育つビワ、1月1日湘南台
■花はないがよく育つビワ、1月1日湘南台
ロウバイの花、1月1日六会
■ロウバイの花、1月1日六会
 冬に花を見ることの少なかった20年ほど前の話です。 その頃、片瀬中学校の中庭には、1本のビワの木がありました。 かなりの大きさで、初夏になると、たくさん実が成りました。 誰が植えたものかわからず、果肉の薄いことから、 種から芽生えて自然に大きくなったとも考えられます。 誰も実をとって食べようとはしませんでした。ビワの花は冬咲きです。 かたつむりの前月号に、「日本の野生植物で、冬のさなかに花を咲かせるものはない。」 と書きましたが、カンアオイのほかに、ビワも例外といえるでしょう。 しかし、ビワが自生するのは暖流(黒潮、対馬海流)の洗う、冬に温暖な海岸地域に限られます。 藤沢でも冬季温暖な片瀬は、ビワの生育に適しているものと思われます。
 ビワの開花が始まるのは、ヒイラギ、サザンカ、ヤツデより少し遅れて、12月になってからです。 花に虫がやってくるようには見えませんが、ちゃんと実が成るのですから、 きっと誰も気づかないうちに、虫が花粉を運んでいるのでしょう。 果物としてのビワの産地は、千葉県と長崎県で、冬でもツバキの花が咲くような暖かいところです。 ビワの実には、大きなタネが二つ三つ入っています。ほとんどの木の種子は、 蒔いた年には芽生えませんが、ビワの種子は例外で、野菜や草花の種子と同じで、 蒔いた年に芽生えます。藤沢ならどこでもよく育ちますが、実を成らせるには少し温度不足のようです。 「木の種で、蒔いた年に芽生えるのは、他にあるのだろうか」、また、「熱帯の木ではどうなのか」、 さらに、「翌年にならないと芽生えない木の種子を、 蒔いた年内に芽生えさせる方法があるのだろうか」、 答えを知るすべもない疑問が、つぎつぎと頭に浮かんで来ます。 せめて、「花粉がどのようにして運ばれるのか」をつきとめることができればと思っています。 2006年に聞いたニュースで、「種無しビワができた」とテレビで放送されました。 苗の発売は数年先になるとのことですが、種無しビワの実そのものは一部の地区では、 売り出すくらい生産されるようになったということで、いずれ店にも出回ることでしょう。 ビワの花の咲き始めは、ふつう12月になってすぐですが、近頃はどうやら、少し遅く、 1月まで花が見られるようです。片瀬には、ほかにもビワの木があると思うので、 1月にどのくらい花が見られるか、調べてみたいと思います。 サザンカの花が正月を飾り、ヤツデやヒイラギの花も遅くまで咲いていたこの冬です。 ビワもサザンカも、もともと西国暖地起源で、 栽培されてこのあたりにも広まったもので暖かい地域では、 冬のさなかにも開花する性質があるのでしょう。 寒い正月には外に出て、冬に咲く花を探しながら、 暖冬を実感するのも勉強の一つかなと思うしだいです。
トウシャジン(マルバノニンジン)の花、1月3日 正月咲き太郎冠者椿、1月3日六会
■トウシャジン(マルバノニンジン)の花、1月3日 ■正月咲き太郎冠者椿、1月3日六会
正月にはロウバイが咲きますが、これは、中国原産です。 以前、トウシャジン(マルバノニンジン)のことを書きましたが (かたつむり288号)、1月3日に1輪だけ花をつけました。 正月に咲く太郎冠者という椿も中国原産といわれています。


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