−ハチジョウススキ− | ||||||||||||||||||||||||||||||||
運営委員 鈴 木 照 治 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
また、この二者は、開花期、即ち穂の出る時期もやや異なり、ススキの9〜10月に対してハチジョウススキの方が早くて8〜9月です。 いつも緑の葉を茂らせているからでしょうか、私は春4月に穂を出したのを、この目で確かに見て、写真に撮ったこともあります。 ハチジョウススキは、海沿いのガケが主な自生地で、ススキは、内陸部のガケに生えます。どちらも全国に分布します。 あるサスペンスドラマで、ハチジョウススキが京都南部のある特定の場所に生えているという設定がなされていて、 それが謎を解くカギとされました。 昔の人もハチジョウススキがススキと違うことを知っていて、江戸時代に植栽され、不連続な分布をしているということも否定はできません。 ハチジョウススキとススキの関係は、前にお話したことのあるオニヤブソテツとヤブソテツに似ているので、オニヤブソテツと同様、 ハチジョウススキも東京(江戸)に自生していたと考えられるからです。 実際、ススキ属にはよく似たオギがあります。一般の人々にはススキとオギは区別されずに扱われて来ているようです。 よく知られている昔の流行歌に「おれは河原の枯れススキ……」というのがありますが、実際、河原に行って見ると、 生えているのはオギばかりで、ススキを探してもなかなか見つかりません。やっと見つけたとしても、 そこは土手の上か護岸の石積みの隙間で、近くでも本当の河原とは言いがたい場所です。 ススキとオギとは非常によく似ているので、葉と穂を見ただけでは並べてみても区別がつかないほどです。 明らかに違っている点が3つあります。1つは、小穂についた1つの花をとって見ると、 ススキには2本の芒(ノギ)がつき出ているのに対し、オギは羽毛ばかりで突き出るノギはありません。 2つ目の相違点は、オギは稈(カン=草質の硬い茎)が立ってそこから数枚の葉が交互に出ますが、 ススキでは稈から出る葉は花穂の下の1枚ほどで、ほとんどの葉は根元から出ています。 3つ目に、オギは地面から1本、1本、別々に稈を出しますが、ススキは一ヵ所から多数の稈(茎)が叢生 (ソウセイ、草むらになって生える)します。 この3つの違いをおさえていれば、遠くからでも、近くでも、手にとって見てもすぐに区別ができます。 本来の群生地は、ススキは山、オギは河原ですが、どちらも造成された空き地や道路わきに生えるので、 よく見て区別してみると面白いでしょう。 もう一つ、よく似たトキワススキというのがあります。分布している地域は伊豆より南になりますから、 江の島を含め、県内には存在しないと思われます。 もしあっても、穂の形がススキやオギと違って、キビのように円錐形になるので区別は容易でしょう。
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