このレポートは、かたつむりNo.310[2008(平成20)03.23]に掲載されました

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−寒くても暖冬!−
運営委員 鈴 木 照 治
 
 「寒いのに暖冬?」と題して昨年の2月号に、1月上旬から咲いている花を紹介しました。 秋に咲く花が冬になってもまだ咲いている、春の花が真冬の1月から早くも咲き出した、これは面白いと、 写真に収めるうちに、寒い日が何日かあったとしても、総体的に気温が底上げされているので、 それを植物が敏感に反応して、正月に花を咲かせている……これは、まさしく暖冬現象だと思いました。 気象庁によれば、このところ暖冬は続いているということですから、 年によっていろいろな暖冬による現象が見られるのではないか、 はたして次の正月には、どんな現象が起こるのだろうかと興味、関心をよせて今年も新年を迎えました。 そして、1月1日、近くの神社に行ったあと、去年は元日から満開のロウバイが、 今年はどうなっているのか見ることにしました。 ロウバイも梅と同じで、年により開花の時期がかなり変動するものです。 行って見ると、やはりロウバイは今年も元日から満開の状態になっていました。
葉付きロウバイ(元日六会)
葉付きロウバイ(元日六会)
 私の記憶では、ロウバイが咲くのは、旧暦の12月1日(今年でいえば1月8日)ごろからで、 満開は1月中旬以降(梅よりひと月早い)であったはずです。 ロウバイという名前も、蝋月(旧暦12月)に咲く梅の意味で蝋梅(ロウバイ) なのだと教わったからです。ただ、今年のようすは、明らかに例年とは異なりました。 同じ満開でも、今年のは、緑の葉がたくさん着いたままの状態でした。 ロウバイは落葉樹で、通常、花の咲くときには、葉は落ちてありません。 ただ、落葉の時期は、多くの落葉樹より半月以上も遅い12月中旬です。 つまり、この冬は例年より落葉が遅いというわけです。
 ロウバイをあちこちで見かけるようになったのは比較的近年のことで、 昔はそうどこにでもあるというものではなかったと思います。 それに昔からのロウバイは、今のように鮮やかな黄色(満月という品種)ではなく、 和ろうそくのロウ(蝋)のような色(素心=ソシン)で、 もっと古くは、花の中心にかけて赤紫色が濃くなる花でした。
葉付きロウバイ(1月熱海)
葉付きロウバイ(1月熱海)
鎌倉円覚寺の奥にある黄梅院の老木はこの花です。 中国原産で、図鑑にはこの伝統的なタイプの花が載っています。 それが近年は、冬に咲いて、あまり大きくならない庭木として注目され、 花の芯まで純黄色で丸弁大輪の改良品種(満月)が普及し始め、近頃では住宅の庭に見かけるようになりました。 特に梅園では、梅よりひと足早く咲くため、梅はまだかとがっかりする観光客のために、 満開のロウバイが、せめてものなぐさめの役割をはたしています。(熱海梅園、池上梅園)
 ある年の正月、熱海梅園で、葉をつけた状態で咲いているロウバイを見て、これは珍しいと思って写真に撮ったことがあります。 それと同じことが、藤沢で今年の元日、見られたのです。 暖かい熱海と同様の現象が藤沢にも起こったのは、やはり暖冬がどんどん身近なものになって来ているのだなと思ったものです。
コウテイダリア(元日湘南台)
コウテイダリア(元日湘南台)
 近年見られるようになったコウテイダリア(6m以上にもなる巨大ダリア)の花が、この元日にまだ見られたのも今年の特徴でしょう。 落葉が遅かったのもこの冬に目立ったことの一つです。 以前、正月まで落葉せず、いくらか色づいた緑の葉を持ち越すコナラとイロハモミジを見たことがあり、 この正月、もし機会があれば、そこへも行って見たいと思っています。 「寒くても暖冬!」・・・これが、新年早々、植物たちの私へのメッセージです。



掲載が1ヶ月遅れてしまいました。申し訳ありませんでした。(事務局)



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