自生のヤブツバキを探した頃 | ||||
運営委員 鈴 木 照 治 | ||||
東京付近でヤブツバキの開花期は通常3月下旬ですが、江の島では、前年の秋から咲き始めるものがあり、 11月下旬から12月上旬には一部満開かと思わせる木もあって、厳冬の1月は花数も少なくなりますが、 2月からはボツボツ花数もふえて、3月中旬には再び見頃になります。 江の島を含め、関東南部の太平洋岸は椿の多い地域です。 園芸種の椿の母種であるヤブツバキは、北は青森から南は南西諸島まで広く分布しますが、 目立って多数が植栽され、もしくは自生するのは、冷温帯との境界に近い暖温帯北部、 (熊本、島根、金沢、京都、奈良、名古屋)三浦、伊豆、房総です。 より温暖な紀伊、四国、九州の太平洋岸は、他の暖地系の植物に押され、 より冷涼な東北地方では寒地系の植物が勢力を得るためでしょう。 三浦半島の自然林へ行くと、ヤブツバキが本当に生き生きと生育しています。 三浦地方の古い民家の周囲には、必ず椿の植栽が見られます。 江の島の気候は三浦、伊豆、房総と同じく温暖で、椿の生育に適しており、島内各所に椿が自生しています。 椿は多少日当たりが悪くても、せまいところでも、丈夫でよく育ちますから、 都市住宅の庭木としてすぐれた特性を持つといえます。。ただ一つの欠点は、チャドクガの発生です。 野鳥の来ない町中では、風通しのよいところに植え、込み合った枝を取り除き、 6月と8月には、よく見て虫害の跡があったら、家庭用の防虫スプレー* (*アイロンかけ用のりスプレーで十分効果あり)で防除することを忘れなければ、 他に何の手入れもいらず、毎年花を見ることが出来ます。 伸びすぎたら、花の終わったころ込み合った部分を適当に伐り除いてやればよく、実に手間いらずの庭木です。 また、実った種を蒔けば、育った子どもは身近な動物がそうであるように、 100%親とは別の個性を持った木になるというのも興味をそそります。 江の島はもとより、藤沢市内どこでも、もっと椿が多くなれば、住む人も訪れる人も、楽しみになると思います。 最近気になることは、常緑林の中にヤブツバキの幼苗が見られないことです。 常緑林の中で寒さに弱いはずのノハカタカラクサが、旺盛にはびこる様子があちこちで見られ、 常緑林からだんだん自然が失われて行くのではないかと心配になります。 自生ヤブツバキの花の写真が見つからず、植栽のものを掲載します。 |