昨年12月、ノーベル平和賞を受賞した、ゴア元米副大統領が自ら解説者として登場し、
そこで紹介される地球温暖化を目の当たりに示す情景やグラフは、地球上のいたるところ、
きわめて多岐にわたっています。
そして、その情景のほとんどは、ごく最近のテレビその他のマスコミでしばしば報道されているもので、
私たちにとってはすでに知らされていることばかりです。
しかし、つぎつぎに出てくる政治や経済、国際紛争などのニュースにまぎれ、
ときに挿入される自然関係のニュースは災害関係を除けば、あまり話題にもなりません。
しかし、この映画では、ゴア氏の冗談も交えたたくみな話術で、非常にわかりやすく、
地球温暖化が差し迫った問題として、だれもが納得できる形で提示されています。
私自身、これまで数年にわたって、くりかえし、温暖化が、
身近な植物の世界に及んでいる事実を紹介してきましたが、映画の中でも、
ゴア氏はそのことを指摘していました。
……「これまで身近な野外で育っていた植物が、いつのまにか姿を消し、入れ替わりに見慣れない植物が繁茂するようになる」、
「秋が長引き、春の来るのが早まる」……と。
私たちの身近な野草でも、この30年ほどの間に、春のキンラン、ギンランをはじめ、スミレやノイチゴの仲間、
在来のタンポポ、リンドウの仲間、イカリソウ、ツリガネニンジン……などなど、
いつのまにか姿を消したものは枚挙にいとまがないほどです(*かたつむり243号「野草はどこへ往った」)。
入れ替わりに多くなったのは、ハルジオンをはじめ、セイヨウタンポポ、ヒメオドリコソウ、もっとさかのぼれば、今、
都会のいたるところに繁茂している雑草のことごとくが、外来の侵入者であることに気づくはずです。
こうした現象の原因のすべてが、温暖化によるものとはいえないでしょうが、
人間が原因をつくった環境変化であることは、間違いありません。
なかでも気になるのは、暖冬のシグナルです。かたつむり3月号に、ノハカタカラクサが、
これまで帰化植物の侵入を許さなかった江の島の常緑林の内部にまで生育の場を広げていることを話しましたが、
この植物が10年くらい前から常緑林内の下草として旺盛に生育していることには気づいていました。
野生のノハカタカラクサを私が始めてみたのは、藤沢では20年以上も前の湘南台駅近くで、
周辺にはまだ、いたるところに空き地や畑があって、あたりにさえぎるもののない日のよくあたる道ばたでした。
当時は、よくこんなところに生えたものだ、はたして寒い冬が越せるのだろうかと思ったものです。
それは、ノハカタカラクサから生まれた園芸種のハカタカラクサ(白い縞の葉)が、
温室植物として昔からよく知られていたからです。このように、寒さに弱い植物が、今では野外で冬を越す姿は、
他にいくつもの例をあげることができます。梅も桜も最近の10年間を平均すれば、それ以前より開花は早くなっています。
この冬は特別寒い日が多かったように感じましたが、それでも、ゴア氏の指摘には納得しています。
機会があったら、この映画をぜひご覧になるよう、おすすめします。
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