江の島のキケマン | |||||||||||||||||
運営委員 鈴 木 照 治 | |||||||||||||||||
ムラサキケマン(学名Corydalis incise Pers.)の属するキケマン属には、昔の雑木林でおなじみのジロボウエンゴサクがあります。 (高山植物のコマクサは近縁の属で、葉の形がよく似ています)。 アネモネとトリカブトが同じキツネノボタン科であることは葉の形からなるほどと思われますが、 キケマンがカリフォルニアポピー(花菱草)と同じケシ科に属するのも、葉の形がそっくりで納得できます。 キケマンは、ムラサキケマンと属も同じで、生態もよく似た林縁植物で、不定時の水流や崩壊などによる植生の破壊や擾乱 (ジョウラン=かき乱されること)で生じた林縁を生活の本拠としています。 近縁のヤマキケマンが、山地の崩壊地に生じるのに対して、キケマンは近海の、時には乾燥する崩壊地の縁などに生えます。 50年以上前(1950年代)、江の島金亀楼下の崖にかなりの群落があり、初夏の花の盛りは見事なものでした。 その後、1980年頃までは、数株あるのを見ましたが、しだいに雑草や低木が茂って、見られなくなりました。 最近、斜面の整備が進み、ふたたび日が当たるようになって、今年はところどころに目立たないくらいの株を見つけることができます。 また、5・6年前、西浦の墓地のガケに群落が見つかり、キケマンが、まだ江の島に健在であることがわかりました。 キケマンを簡単に見ることができる場所は、今のところ江の島ぐらいです (江の島以外で、私が見たのは、三浦半島の先端に近い小松が池だけです)。 江の島のキケマンを見て気がついたことは、花後にできる果実 (=サクという莢=サヤ)の形が数珠 (ジュズ)状に近い形をしていることです。 日本植物誌によるとキケマンの凾ヘ狭被針形であるのに対しツクシキケマンの凾ヘ数珠状であると記されています。 これを確かめるためには、5月中下旬に行って、果実()の形を見なければなりません。 今の牧野原色植物大図鑑を見ると、ツクシキケマンの記載はなく、キケマンだけになっています。
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ツクシキケマン Corydalis heterocarpa Sieb.et Zucc. (var. heterocarpa )