日本のワイルドフラワー・カワラナデシコ | ||||||||||||||
運営委員 鈴 木 照 治 | ||||||||||||||
カワラナデシコは丈夫で栽培しやすく、秋の彼岸までに鉢などに種蒔きして、 苗が虫に食われないように育てれば、定植してからは、雑草に負けずに育って、翌年の初夏には花を咲かせます。 地際の葉を残して上部を刈り取り、追肥すれば、秋にもう一度花が咲き、秋の七草の一員であることを示します。 余談ですが、先月号で紹介したハマナデシコは、長野県特産の高原の花、シナノナデシコと近縁です。 山地と海岸とは、強風と乾燥にさらされる点で共通するきびしい環境です。 さらに、シナノナデシコの近縁種には北アメリカ原産のヒゲナデシコ(英名スイートウィリアム)があります。 秋まきで初夏の花壇を彩るきわめて丈夫で作りやすい花壇草花として戦前から知られています。 近頃のように安価なポット苗が大量に出回るようになる以前は、 花好きな人が種から育てて咲かせているのを見る程度でしたが、百日草やえぞ菊に先立ち、 矢車菊や蛇の目菊などと競って咲くヒゲナデシコは古き時代の風景の一つでした。 佐渡の相川の町はずれで、昔なつかしい真紅のヒゲナデシコを見かけました。 このヒゲナデシコも最近のバイオテクノロジーの成果でしょうか、関西系の種苗会社が開発した、 蒔いた年に咲いて、しかも宿根するという画期的な異種間雑種に、お株を奪われる情勢になりました。 テルスターと名付けられたこの新品種は、江戸時代からの古典植物「とこなつなでしこ」に似て、 草丈は低く大輪で花色も豊富、しかも丈夫で、花期の長い、花壇・プランター向きの草花です。 ナデシコ属の園芸種で最も代表的なのがカーネーションです。 その原種はヨーロッパ、地中海沿岸に自生する海岸生のナデシコの一種デルトイテスで、花はピンクの一重、 丈夫な一期咲きですが、この系統の園芸種も古くから我が国に伝わり半ば自生状態のものが各地に見られます。 ロックガーデンによく利用され、もともと海岸植物なので、カワラナデシコやハマナデシコと同様、 乾燥に強く、青みがかった緑白色の針のような細葉も美しく、市街地の住宅でもときどき見かけます。 箱根大涌谷のバス亭と土産店の間の緑地帯に群がって咲きそろう姿が印象に残りました。 近ごろは、あいた土地を長持ちする花園にするために、 ヒマワリやコスモスより簡単なワイルドフラワーの種をまきますが、これとて何年も持続しません。 多年草のナデシコ類を利用することも考えられます。 潮風の吹き付ける海べりには、ハマナデシコやカーネーションの原種のデルトイテス種、 それ以外の乾燥しやすい場所にはカワラナデシコやヒゲナデシコ系の丈夫なものを使えば、 管理もしやすいと思われます。 |