江の島の名物リュウゼツラン(竜舌蘭) | ||||||||||||||||||||
運営委員 鈴 木 照 治 | ||||||||||||||||||||
リュウゼツランは、アロエに似て大きく、葉はふちに鋭いトゲを持ち、細長いへら形で厚みがあり、 根元からたくさん出て直径5メートル以上にもなります。原産地はメキシコで暑さや乾燥にはたいへん強いが、寒さは苦手です。 ハマユウやアロエよりは耐寒性があり、関東南部の温暖地なら露地でつくれます。 葉の両端にクリーム色の縞が入っているのがせまい意味でのリュウゼツランで、 深緑一色の方は正しくはアオノリュウゼツランというのですが、 両方ともリュウゼツランで通ります。 英語ではセンチュリープランツ、つまり百年植物というように、何年たっても、なかなか花を咲かせないので、 開花には少なくとも50年かかるといわれていました。 江の島の植物園には昔からありましたが、花を見た人はだれもいませんでした。 ところが昭和30年ごろ開花し、珍しいので新聞にも写真入で紹介されました。 原産地では10年か20年で花をつけるということです。 今は名前の変わったサムエル・コッキング苑には大小60株ほどありますが、50年前に咲いたきり、 しばらく休んでいましたが、20年位前からは、1〜2年ごとに1株ずつ開花するようになり、 10年前(1998)には日本で初めて二株同時に花をつけました。 このように、以前よりよく花をつけるのは、それだけ温暖化が進んだとも考えられます。 花の咲いた株は、まもなく全身黒く変色し、株ごとそっくりそのまま立ち枯れてしまいます。 イチゴとおなじように、横にはう茎をのばして株元に10センチくらいの小さな苗をつけます。 苗の小さいうち、冬は室内で保護しますが、大きくなれば外へ出しても枯れません。 数十年前は、三浦半島の海岸沿いに行くと逗子、葉山のあたりから、 そこここにリュウゼツランの大株を見かけました。 西日を受ける岩がちの乾燥地には最も適した庭木でしたが、広い場所を占めるためか昨今ではあまり見かけなくなりました。 江の島サムエル・コッキング苑のリュウゼツランは歴史が古く、明治期、 ここに植物園を創ったサムエル・コッキングが持ち込んだものと思われます。 そしてその後、温暖な相模湾沿いに広まったものと想像されます。土質を選ばず、乾燥、強風に耐え、 今では東京湾の中央、海ホタルの植栽にも使われています。 空き容器を利用して小苗を育て、そこここの向陽の空閑地に補植し、大きくなりすぎてもてあますようなら、取り除いて、 代わりにまた子苗を移植すれば、いたづらに裸地や雑草地をさらすよりは、 はるかに観光地湘南にふさわしい景観になるでしょう。 そしてその周囲には、以前江の島に多く見られたスカシユリやハマカンゾウ、イソギクなどを植えてやれば、 シマナンヨウスギやタイミンチクと同様、これこそ冬期温暖な江の島の植物ですと、おおいに宣伝できるでしょう。
|