江の島サムエル・コッキング苑のクックアロウカリア | ||||||||||||
運営委員 鈴 木 照 治 | ||||||||||||
「クックアロウカリア(市指定天然記念物) Araucaria Columnaris Hook 世界周航家キャプテン・クックが安永3年(1774年)南太平洋パイン群島で発見したもので、 明治15年(1882年)頃、当時の植物園創設者サムエル・コッキングが植えたものです。 これは熱帯植物であるのに、江の島のような高緯度の地で成長しているのは非常にめずらしいものであります。 樹形は柱状で、輪生の水平の大枝を出し、葉のつきかたに特徴が見られ、樹皮は紙のようにはがれます。 原産地:南太平洋ニューカレドニア島 高さ:約16m 幹囲:約2.5m 根回り:約3m 藤沢市観光課、藤沢市教育委員会」(標示板のまま記載)* S・C苑のクックアロウカリアは2本あり、並んで立っています。 南側の木(松本館の前から見て左側のやや小さい方の木)も、説明板のある方と、同じ樹齢ではないかと思われます。 同時期に植えられたものの。まわりの木に囲まれて、生長に遅れが生じたためと考えられます。 枝先につく葉の茂みが、造り酒屋の軒につるされる新酒の売出しを示す杉玉のように丸く見えるのが印象的です。 また、となりに立つシマナンヨウスギに比べると葉の色がやや青みを帯びていることもわかります。 ここでクックアロウカリアとシマナンヨウスギの属するナンヨウスギ科についてふれますが、 この仲間は針葉樹の中でも珍しく熱帯地域に分布します。 恐竜の栄えたジュラ紀、白亜紀には世界中に分布していたことが各地に産する化石から知られています。 現在ではアフリカを除く南半球に限定されますので、科名、属名のアロウカリアは南米や大洋州を含む地域を意味し、 日本名もそれを訳してナンヨウスギといいます。ちなみに中国名は南美杉です。 S・C苑には、シマナンヨウスギのほかにも同じナンヨウスギ属のチリマツがあります。 世界植物大辞典によると「ナンヨウスギ属(Araucaria Gen.) 裸子植物、ナンヨウスギ科。針葉樹。アフリカを除く南半球に16種が広く分布する。 (以下略) チリマツ Araucaria araucana (Molina) K.Koch 英 Monkey Puzzle パタゴニア地方のアンデス山系に分布し、広卵状の硬い葉をもつ、種子は食べられる。 ナンヨウスギ Araucaria cunninghamii D.Don 英Hoope Pine , Moreton Bay Pine 樹高30〜40mになる. オーストラリア東部とニューギニアに分布。(以下略)」 となっていてクックアロウカリアの記述はありません。 *標示板の注釈の補足 @南太平洋パイン群島−−ニューカレドニア島沖数十kmの小群島。白砂青松の観光地。 A明治15年(1882年)頃、コッキングが植えた−−植物園が造られた明治22年以降とも考えられます。 Bニューカレドニア島−− シドニーの北800kmのプリスベーンから北東1,200kmの南太平洋上に浮かぶかなり大きい島(四国< 同島< 九州)。 南緯21度(南回帰線の少し北、赤道よりの熱帯地域。北半球なら台湾の高雄市あたり)。(フランス領)。 C種名のcolumnaris(円柱体の)は、固有名詞ではないので小文字で始まります。
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