このレポートは、かたつむりNo.322[2009(平成21)1.17]に掲載されました

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オンタデとメイゲツソウ−高山植物になった植物−
運営委員 鈴 木 照 治
 
オンタデ
■オンタデ
メイゲツソウ
■メイゲツソウ
オノエヤナギ
■オノエヤナギ
オンタデとイタドリ?
■オンタデとイタドリ?
イタドリ
■イタドリ
オンタデとメイゲツソウ
■オンタデとメイゲツソウ
オンタデ
■オンタデ
 富士山で見られる高山植物の代表として、私はオンタデとメイゲツソウを挙げたいと思います。 フジアザミやフジハタザオなど、富士山特有の高山植物もありますが、登山道を歩けば必ず見られるとは限らず、 誰でも親しめるというわけにはいきません。 その点、オンタデとメイゲツソウは、登山道のまわりに多数、群落をつくって、長期間、花を咲かせていますから、 簡単に観察ができます。 昨年の科学少年団の活動でも、この二種類の植物がよく観察できましたので、撮った写真を紹介し、説明します。
 富士山南側からの登山口、新五合目駐車場から、六合目に向けて上っていくと、 それまで溶岩の上に生えていた丈の低いカラマツなどの樹木は姿を消し、生えているのは草ばかりになり、 それもたちまちまばらに生えるようになります。 六合目の店をかねた山小屋を通り過ぎ、山頂への道から分かれて宝永火口へ行く平坦な道へ入ると、 溶岩の上にはオノエヤナギがへばりつき、岩のすき間にはイワスゲが細い葉をひげのように突き出しています。 ガレキの斜面のところどころに、オンタデが見えてきます。 宝永第一火口に入ると、火口内はすり鉢状のガレキの斜面で、あたりはオンタデ一種類の世界です。 オンタデが、富士山のいちばんきびしい環境に生える代表的な高山植物であることがわかります。 宝永第一火口の入り口までもどり、
イワスゲ
■イワスゲ
火口のへりに沿ってガレキのザクザクとした道を注意しながら下っていくと、 火口の外側の植物はしだいに増えてにぎやかになり、丈の低い木も見えてきて、 第二火口のへりから第三火口の中が見えるあたりで道は右に折れて林の中に入ります。 五合目と同じぐらいの標高になるでしょうか、この丈の低い原生林を進むと途中に山崩れをおこしやすい場所があり、 林が途切れて草とガレキの斜面が広がっていました。 そこにはイタドリが生えていました。平地では、夏に花が咲くのですが、ここではまだつぼみです。 そばにばオンタデが黄白色の花をつけていました。
 翌日、北側からの登山口の吉田口五合目から、お中道に入り、途中から分かれて御庭火口列への道を上りました。 あたりの木の丈が低くなり、数も少なくなって、ガレキの道になるといたるところに生えているのは紅い花をつけたメイゲツソウでした。 ちょっと見た感じはオンタデとよく似ていますが、花の色がまるでちがいます。すぐ近くにはオンタデもありました。 どちらも、ガレキの堆積する斜面に生える点は同じですが、オンタデの方が六合目より高いところまで分布するのに対して、 メイゲツソウは五合目からせいぜい六合目までのようです。
 メイゲツソウはイタドリの高山型変種で、葉の形はイタドリと全く同じです。イタドリの花は白ですが、こちらは紅色(白もあり)です。 もう一つの違いは、草丈が低く、寒い高山にもかかわらずオンタデと同じ時期に花を咲かせることで、これは下界のイタドリには出来ないことです。
 オンタデはウラジロタデの高山型変種で、花は白に近い黄緑、葉裏は緑色、母種は北海道など北国に分布し、 花は帯黄緑色(うす黄緑)、葉の下面(裏)は白軟毛密生(葉裏が白い)と日本植物誌にあります。
 オンタデとメイゲツソウ、どちらもそれぞれの母種、ウラジロタデとイタドリから高山植物へと変身したと考えると、 生物の世界の不思議さが奥深いものに感じられます。
メイゲツソウ
■メイゲツソウ
イタドリ
■イタドリ




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