オンタデとメイゲツソウ−高山植物になった植物− | ||||||||||||||||||||
運営委員 鈴 木 照 治 | ||||||||||||||||||||
富士山南側からの登山口、新五合目駐車場から、六合目に向けて上っていくと、 それまで溶岩の上に生えていた丈の低いカラマツなどの樹木は姿を消し、生えているのは草ばかりになり、 それもたちまちまばらに生えるようになります。 六合目の店をかねた山小屋を通り過ぎ、山頂への道から分かれて宝永火口へ行く平坦な道へ入ると、 溶岩の上にはオノエヤナギがへばりつき、岩のすき間にはイワスゲが細い葉をひげのように突き出しています。 ガレキの斜面のところどころに、オンタデが見えてきます。 宝永第一火口に入ると、火口内はすり鉢状のガレキの斜面で、あたりはオンタデ一種類の世界です。 オンタデが、富士山のいちばんきびしい環境に生える代表的な高山植物であることがわかります。 宝永第一火口の入り口までもどり、
翌日、北側からの登山口の吉田口五合目から、お中道に入り、途中から分かれて御庭火口列への道を上りました。 あたりの木の丈が低くなり、数も少なくなって、ガレキの道になるといたるところに生えているのは紅い花をつけたメイゲツソウでした。 ちょっと見た感じはオンタデとよく似ていますが、花の色がまるでちがいます。すぐ近くにはオンタデもありました。 どちらも、ガレキの堆積する斜面に生える点は同じですが、オンタデの方が六合目より高いところまで分布するのに対して、 メイゲツソウは五合目からせいぜい六合目までのようです。 メイゲツソウはイタドリの高山型変種で、葉の形はイタドリと全く同じです。イタドリの花は白ですが、こちらは紅色(白もあり)です。 もう一つの違いは、草丈が低く、寒い高山にもかかわらずオンタデと同じ時期に花を咲かせることで、これは下界のイタドリには出来ないことです。 オンタデはウラジロタデの高山型変種で、花は白に近い黄緑、葉裏は緑色、母種は北海道など北国に分布し、 花は帯黄緑色(うす黄緑)、葉の下面(裏)は白軟毛密生(葉裏が白い)と日本植物誌にあります。 オンタデとメイゲツソウ、どちらもそれぞれの母種、ウラジロタデとイタドリから高山植物へと変身したと考えると、 生物の世界の不思議さが奥深いものに感じられます。
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