想いを拡げるタイトゴメ近縁種 | ||||||||||||||||||
運営委員 鈴 木 照 治 | ||||||||||||||||||
以前、タイトゴメについて記述した際、ふれたかも知れませんが、片瀬山や大船で、タイトゴメそっくりな植物を見たことがあります。 その後、片瀬山では見かけませんが、大船のものは健在で、よく繁茂し、広がっています。 一本採集して挿し木し、鉢植えにしておきましたがよく増えるのに花は咲きません。 ところが、何年ぶりかして今年の6月中旬、鉢から少し離れた敷石の隙間で花をつけているのが見つかりました。(写真4)、(写真5) そこで、あらためて葉をよく見ると、タイトゴメの米粒形と少し違うようで、ピーナツを半分に割ったような葉の表が平らに見えます。 しかし、マルバナンネングサ(ヘラ形の葉)ともちがって、葉の裏は丸く、 平らではありませんし草丈も低く1〜2cm(マルバマンネングサなら7〜8cm)ですから、これまた私にとっては新しい発見です。 6月下旬、鎌倉で、道に面したエントランスの一角をセダムの寄せ植えにし、そこにタイトゴメそっくりで花が白色のセダムがありました。(写真6)、(写真7) こうしてみると、タイトゴメに近い仲間は」1種や2種ではなさそうに思われます。 その中で、タイトゴメただ1種が江の島の岩場に自生することになったのは、どんな経緯なのでしょうか。 何種類もある近縁種のどれもが、日のよく当たる岩の表面の、わずかな裂け目に身を支えるだけの根をおろし、茎と葉を岩の表面に密着させて伸ばし、 他の植物の割り込みをしりぞけつつ、ただ一種、過酷な環境条件の岩場を独占的な生育場所にしていると想像すると、 それらの種類の故郷が世界中のどこにあるのか、きっとどこかにあるはずですから、その一つでもルーツをさぐる手がかりを得たいものだと思いました。 もし、本来の自生地がわかれば、現地を訪ねる旅も夢見ることが出来ます。 私の家のタイトゴメ近似種は、植えた鉢のものはよく茂っていますが開花せず、下にこぼれて敷石のすき間に生えたものだけが、今、花を咲かせています。 焼けるような敷石の照り返しが、開花を促進しているようにも見えます。 江の島の舗道沿いに繁殖するタイトゴメ(写真8)も私の家のと同様、午前中半日陰で、西日の当たる敷石の縁に生育するものです。 何年か前、横浜市鶴見区生麦で、生麦事件発生現場から100mほど東京よりの「じゃもかも神社」入り口で見たタイトゴメは、はたして本物なのか、 近似種なのかわからなくなり、先日、もう一度通ったときに探してみましたが、どうしても見つかりませんでした。 環境が少し変わっただけで、生育を続けることが難しくなるのかも知れません。 江の島の舗道沿いに増えているタイトゴメ(まさか近似種ではないとは思いますが)も、いつまであそこに生き続けられるのか、少し心配になってきました。(写真9、植栽のセダム)
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