このレポートは、かたつむりNo.331[2009(平成21)8.25]に掲載されました

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ヒカリゴケの話
運営委員 鈴 木 照 治
 
以前簡単に見えた
■以前簡単に見えた
フラッシュなし
■フラッシュなし
フラッシュあり
■フラッシュあり
参照図
■参照図
 夏季活動で訪れた光前寺のヒカリゴケは有名です。 「のぞき込んでもだめだよ、穴から少し離れて、目線を少し横(水平)にずらしながら、見なさい」。 といいながら私もさがしましたが、なかなかよく見える穴は見つかりませんでした。 私は以前にも見たことがありますが、もっと簡単に見られたように思います。 参道のあたりが以前より明るくなり、乾燥しがちになったためではないかと推測します。 森の中のように、薄暗く、適度な湿り気を保つようにしないと、しだいになくなるおそれがあります。 ヒカリゴケが光るのは、コケ(蘚苔類)とはいっても糸状体(コケになる前の段階の菌類のような糸状の姿) の一部がレンズ状(球体)になり、一方から射し込む光の集まるところに葉緑体があって、光合成に必要な赤色光を吸収利用し、 その補色である緑色が反射光となって、のぞき見る人の目に金色に光って見えるのです。(図参照)
 コケ(蘚苔類)の多くは、森林の中の、落ち葉の積もらない場所(針葉樹や下草の下など)に生えます。 外光(さえぎるもののない場所に当たる光)の1%にも満たないわずかな光のもとでで生活しています。 そのコケ類でも生育の難しい、さらに微弱な光の下でも、温度や湿度がよい条件なら、ヒカリゴケが生育できるのです。 特定の方向から射し込む光をレンズを通して集め、葉緑体にうまくあてることができるからだの仕組みを持っているからです。 ヒカリゴケは、今では、ごく稀にしか見られませんが、以前はあちこちの小さな横穴や洞窟で見られました。 鎌倉の名越の奥にある「黄金やぐら」は有名でしたが、今では明るい道路わきになって、説明板だけで、ヒカリゴケはありません。
 昔、大学の研究室で、顕微鏡を使っているところでは、丸底フラスコに青い水を満たして、外光を集め、 鏡で顕微鏡に導く装置がありました(今では電気集光器)。 丸いフラスコに水を満たしたものが、一つの大きなレンズとなって、一方から来る光を球面反対側のほぼ一点に集めます。 ヒカリゴケの場合、細胞がほぼ球体なので、このフラスコと同じ原理で、集めた光を葉緑体にあてて、 ほかのコケ類でさえ利用できない微弱な光で光合成が出来るしくみです。
 このしくみを模型を使って確かめてみようと思い、身近な材料で試作してみました。 簡単に作れて、大体うまくいき、のぞき込むと、奥で光るのがわかります。 ビー玉、銀紙、セロテープまたは接着剤、黒い紙(補強に牛乳パック、画用紙に墨を塗ってもよい)……で作れます(図参照)。
 もし、丸底フラスコで大きな模型を作り、一方から光を当てれば、おおぜいで観察できるでしょう。

模型の作り方 模型の見え方
■模型の作り方 ■模型の見え方
模型の作り方 模型出来上がり
■模型の作り方 ■模型出来上がり

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