このレポートは、かたつむりNo.335[2009(平成21)12.6]に掲載されました

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紅(黄)葉の話
運営委員 鈴 木 照 治
 
メタセコイア(こども自然公園)
■メタセコイア(こども自然公園)
メタセコイア(草木ダム)
■メタセコイア(草木ダム)
メタセコイア落葉
■メタセコイア落葉
エンコウカエデ(こども自然公園)
■エンコウカエデ(こども自然公園)
 秋の終わり、冬の初めは紅葉の季節です。 11月29日、こども自然公園で、紅葉しているメタセコイアを見ましたが、その次の日、 湘南台小学校の隣の公園で、さらに見事に紅葉した姿を見ることが出来ました。 私は今までメタセコイアが赤く色づくのをしっかり観察することがなかったので、 きっとカラマツのように茶色がかった黄色に変色するのだろうと、安易に想像していたのを後悔することになりました。 それと、「小枝ごと落葉する」と前に書きましたが、木の下に行って見ると、一枚ずつ散っている葉もたくさんあります。 それは小枝のいちばん先の部分だけがまとまって落ちるのでそれ以外の枝についた葉は夏秋を通じて用の終わり次第、 枝から一枚一枚離れて落ちると思われます※1
 そういえば、藤沢にもたくさんあるケヤキが、赤く見事に紅葉するのをあまり見なくなりました。 ほとんどのケヤキは、秋の半ばを過ぎた頃から葉が茶色くなってバラバラに落ちて行き、すべての葉を秋深くまで保ち続けることが出来ません。 条件のよい木だけが、秋おそくまで葉を散らさずに保ち、初冬に全部の葉が赤く紅葉するのです。 関東北部の山間や東北地方まで行けば、きれいに紅葉する木が見られると思います。 今では藤沢市内のケヤキの紅葉は珍しいものになりました。
 コナラは通常、黄褐色に色づきますが、条件によっては、きれいな真っ赤に紅葉することがあります。 なお、三浦半島の暖地では、真冬になっても、緑の葉をつけているものも見られます。 カエデの類も、社寺、公園等に植栽されたものは、きれいに紅葉しますが、中には、色づきの悪い木も混じります。 これは、関東南部に自生するイロハモミジの系統(エンコウカエデ)で、あまり紅葉せず、条件次第では冬まで緑を保ちます。 このことは古くから知られていて、金沢文庫の称名寺という古い寺に「常盤楓」※2という木があり、 冬まで緑を保ちます(藤沢でも見ました)。
 なお、藤沢市内で見られるイロハモミジは、すべてといっていいくらい自生の系統ではありません。 自生がないわけではありませんが、もともとイロハモミジは山の岩がちの急斜面に自生するもので、 藤沢では、村岡や片瀬のように岩のがけのあるところに生えるものです。 気候的にはモミジの生育に適していますから、植えればよく育ち、実も成って、 プロペラ式に風に乗って遠くまで飛び散って、地に落ちたものは、よく芽生えます。 よく紅葉する親の子は数枚の葉をつけた子どものうちから見事に紅葉します。 昔の人も、このことをよく知っていましたから、南関東で紅葉しにくい自生の系統のかわりに、 紅葉するモミジを植えた育てたのだと思います。


※1 冬という危機に備えて休眠に入るための落葉ではなく、用が終わっての通常の落葉のことです。


※2 (立札では「見事に紅葉して御照覧の栄に浴したのちは、もはや紅葉することはない」と夢に出た木の精が言ったとあります。 功成り名遂げて目立たぬよう余生を送るのをめでたしとする鎌倉時代の教訓です。この教えは前田慶次郎の余生にも通じます)



イロハモミジ(源氏山公園)   イロハモミジ(こども自然公園)
■イロハモミジ(源氏山公園) ■イロハモミジ(こども自然公園)
イロハモミジ(足尾)   黄葉と紅葉
■イロハモミジ(足尾) ■黄葉と紅葉

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