六月活動の野外観察では、新林公園の山を特別念入りに探したにもかかわらず、テンナンショウと人のいう特大のマムシグサを見つけることはできませんでした。
かたつむり7月号に紹介したのは、6月号に載せた写真と同じ場所で、今年写した高さ1mほどのマムシグサです(写真1)。
そこで、以前撮影した新林公園のマムシグサの写真を調べてみました。
何枚か写っている写真のほとんどは、葉や花が目の高さ(地上1.2m)よりやや低いもので、背よりも高いのは1本だけでした(07年の写真2、08年の写真3)。
テンナンショウが見られればという期待もこめて、六月末に屋久島に行きました。屋久杉を見るための団体旅行でしたから、深い森の中の山道を歩きました。
そこでは、いたるところでマムシグサに出会いましたが、藤沢のより小さいものばかりでした。
案内の人も、これは(どこにもあるふつうの)マムシグサですと説明してくれました(写真4)。
それでも歩くうち、ウラシマソウのような葉の形をしていて、2枚の葉を持つものを見つけて写真に撮りました(写真5)。
図鑑で見ると、アマミテンナンショウのようでした。
アマミテンナンショウは南西諸島のうち、奄美大島と徳之島にあると日本植物誌(半世紀前の版)に記載されています(牧野植物図鑑には載っていません)。
そこで、図書館に行って新しい版の分厚くなった日本植物誌を見ると、アマミテンナンショウの分布域に九州(屋久島)が加えられていたので、
やはりこれはアマミテンナンショウと見てよいのではないかと思います。大きさはマムシグサと同じで、せいぜい腰の高さ(60〜80cm)程度です。
結局のところ、夢に描いたテンナンショウ(巨大マムシグサ)などというものは、はじめから存在しないものだということが、ようやく納得できたのです。
それにしても、新林公園の山で以前、私が見た高さ1.5mにもなる特大のマムシグサは、かなり珍しいものではないかと思います。
7月23日、24日の両日、小石川植物園でショクダイオオコンニャクの世界最大の花を見るのに大勢の見物客が押しかけたとTVで長蛇の列を写していました。
珍しいものを見たいのは人間の本性で、科学への興味もここから始まるのかもしれません。
万有引力の法則を発見したニュートンの言葉として「私のやって来たことは、たとえていうなら、海辺で珍しい貝がらをひろって喜んでいる子どものようなのだ。
そしてその目の前には、果てしなく広がる海がある。」と高校時代に英語の授業で習った記憶があります。
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