このレポートは、かたつむりNo.348[2010(平成22)12.12]に掲載されました

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レア・アースの話題
運営委員 鈴 木 照 治
 
石川郷土資料館
■石川郷土資料館
元素周期表
■元素周期表
科学館1Fイベント
■科学館1Fイベント
元素トランプ
■元素トランプ
ウラン鉱
■ウラン鉱
希元素鉱物
■希元素鉱物
巨大電気石
■巨大電気石
 近ごろ、しばしばマスコミに登場するレア・アースというのは何のことか、なぜ問題にされるのか、気になっていました。 この夏の活動で、石川町の郷土資料館の展示を見たとき、レアアースエレメント(希土類元素)は、 昔から日本の研究が最も進んでいる分野だと思い出したからです。 いずれも、以前は聞かなかった言葉ですが、化学では有名なメンデレエフの周期律表の中に出てくる「希土類元素」 の英語呼び名のことかと気がつき、近ごろなんでも英語なのは世の移り変わりかと思い知りました。 そういえば、「かなり以前から周期表といいます」と、 科学未来館のサイエンスアゴラ企画展示1F周期表トランプのブース*で説明してくれました。 レア・メタルならば希金属と訳すのでしょうが、それなら、ウラニュウム、金、白金、 イリジウム(万年筆のペン先の合金)は昔から知られていますが、レア・アース・メタル(希土類元素は銀白色の金属) にはどんなものがあって、どんな用途なのか、詳しいことは私にはわかりません。
 昔、宮沢賢治原作「風の又三郎」という映画を見ました。 主人公のお父さんは鉱山の技師で、希少な金属の鉱物を求めて東北の山奥まで、三郎少年を連れて調査に来たことになっています。 その頃の先生の話でも、鉱物は秋田、金属は仙台の学校で教わるのだということでしたから、鉱物のことを調べに行くこの夏の活動は、 私にとって少年の頃のメルヘンの世界を思い起こさせるものでした。
 さて、夏活動の第一日目に、石川町役場のすぐ隣にある資料館に行きました。 巨大な電気石や柘榴(ザクロ)石を見たあと、鉱山の歴史のコーナーがありました。そこまで見学する人は少なく、ゆっくり見られました。 そこでは、100年前から、ペグマタイト鉱床に伴う色々な珍しい元素を含む鉱物が多数発見され、その後、 そのそれぞれが日本の各地で見つかって、日本の希産鉱物研究の端緒となったのが、 この和久観音鉱山や石川地区産の鉱物ということでした。 江戸時代に栄えた日本の金山や銀山は明治の始めにはなくなりましたが、明治時代にあった多くの鉱山は40年位前まで続き、 そこで採算が合わずに廃止され、以後は外国産に頼ることになりました。 それがこの9月とつぜん、輸入がストップされ、にわかにレア・アースの名前がニュースに出たわけです。
 小学校の頃、すべての物質は、動物、植物、鉱物の三つに大別されると習い、昔、テレビの無い時代、 ラジオの人気番組「二十の扉」のような、鉱物に属する身近なものを連想してあてるゲームがありました。 あまり知らない鉱物が、身近なところで役立っているのを聞かされるたびに、不思議な思いにさらされたものです。 今、レア・アースを利用したものが身近にあふれる時代になりました。身近に役立っている鉱物に、もっと興味や関心を持つべきです。 鉱物の種類が思いのほか多いのは、それぞれの鉱物が、それぞれ異なる元素の組み合わせをもち、それぞれ結晶の仕方も違うからですが、 その結晶の違いは、結晶のできるときの環境(温度、圧力等)のちがいによるものだということも、あとから知るようになりました。 鹿児島先生の受け売りですが、マグマが冷えて結晶ができては融け、また結晶とくり返す(岩しょう進化)の過程で、 ありふれた元素の化合物は多数集まって結晶し鉱物になりますが、ごく少数しかない元素は仲間はずれになって寄り集まり、 珍しい希産鉱物ができるのです。この希産鉱物に含まれるのがレア・アース・メタルです。 石川のペグマタイト鉱床が、日本のレア・アース研究の起点になったというわけです。
 中学生の頃、昆虫やその食草の植物にしか興味の無かった私には、鉱物ばかり探して喜んでいる同級生を軽んじていましたが、 今思えば、なんと浅はかだったことでしょう。
 (*エレメントランプを見ていると、周期表をくれました。帰りのお土産店では300円で売っていました)
 中味の何にもない思い出話でしたが、レア・アースについては、そのうち高木先生にお願いしてみようと思っています。
自然金
■自然金
イットリウム鉱
■イットリウム鉱


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