このレポートは、かたつむりNo.356[2011(平成23)06.05]に掲載されました

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一押しの食べる雑草続編
運営委員 鈴 木 照 治
 
アブラナ(栽)教文センター前
■アブラナ(栽)教文センター前
アブラナ(栽) 葉の着き方
■アブラナ(栽) 葉の着き方
セイヨウアブラナ湘南台駅近く
■セイヨウアブラナ湘南台駅近く
セイヨウアブラナの葉は茎を抱く
■セイヨウアブラナの葉は茎を抱く
セイヨウカラシナ引地川の土手
■セイヨウカラシナ引地川の土手
セイヨウカラシナの葉の着き方
■セイヨウカラシナの葉の着き方
 かたつむり5月号でセイヨウカラシナが教文センター前の境川の土手に、毎年たくさん生えると書きましたが、これは誤りです。 5月活動(イカの解剖)の帰りに現地を通って、 ピンクのタンポポに似た花が美しく咲き続く列のところどころに突き出して咲いている黄色い菜の花に近づいてよく見ると、 どれもセイヨウカラシナではなく普通のアブラナ(栽培種)で、あたりをいくらさがしても、セイヨウカラシナは1本も見つかりませんでした。 境川の土手が、中学生の手で、毎年、美しい花に彩られるようになってから、もう20年にもなるでしょうか。 セイヨウカラシナが見られたのは、それ以前の、雑草に茂るままになっていた時代のことで、私の思い違いだったのです。 そしてもう一つ、誤りを訂正いたします。5月号に載せた5ページ上左右の写真(線路とガードレールの写る)は、 セイヨウカラシナではなくセイヨウアブラナです。 茎の上部(花茎の部分)の葉の付け根がくきを抱きかかえるようになっているのがセイヨウアブラナの特徴で、 セイヨウカラシナでは普通の木の葉のように、細い柄になって茎に着いています。 どちらも葉の色(青みがかった粉白色)までよく似ていて、近寄ってよく見ないと区別がつきません。 その違いがはっきりわかるような写真を撮りに行って来ました。 はじめに、湘南台駅近くの線路際の菜の花に近づいてよく観察すると茎の上部の葉の付け根が明らかに茎を抱いていてセイヨウアブラナであることか確認できました。 次に湘南台高校北端の境川にかかる人道橋の脇から土手に入り、 100m先の湘南台大橋の下を通って50m進んだところの砂礫の河原にセイヨウカラシナの大株がありそこまでは下りていくことはできませんでしたが、 土手の上にも数本の小さな株があり、詳しく観察できました。茎の上部の葉は全く茎を抱かず、短い柄で茎に着いています。 拡大写真が撮れたので、空き地を横切る古いあぜ道を通って帰る途中、菜の花を見つけて近寄ると、セイヨウカラシナの群落でした。 何枚か拡大写真を撮るうち、中に混じってセイヨウアブラナが1株あるのを見つけました。 草姿全体、葉の色もすべてセイヨウカラシナと全く同じでありながら、この個体の上部の葉は茎をしっかりと抱え込んでいました。 隣り合って枝を絡めているほかの個体はすべて葉の付け根が細い柄になって茎に着いています。 生えている様子から、この個体はセイヨウカラシナの変異で、セイヨウアブラナではないような疑問がわきました。 セイヨウカラシナの種から、セイヨウアブラナの特徴を持つ個体が生じたとも考えられるからです。 この2者が同じ種(品種)であるという解釈も成り立つのではないでしょうか。 実は、私はこれまで、セイヨウアブラナという帰化植物の存在を知らなかったのです。
 ずっと以前、河原にたくさん見られる菜の花はセイヨウカラシナという帰化植物だと松本先生に聞いて、それ以来、関東近辺、 いたるところの河原や川辺の土手に旺盛に繁殖している姿を見てきたので、雑草化したのはすべてセイヨウカラシナだと思い込んでいました。 そして道端に咲く菜の花は、栽培種のこぼれ種だと調べもせずにきめつけていたわけです。 河原ではなく、路傍や空き地の目立たないところにゲリラのように出没するセイヨウアブラナについて、改めて観察しなければと思っています。 おいしい雑草として一押しのセイヨウカラシナに負けないおいしさのセイヨウアブラナを推薦して、誤報訂正のお詫びといたします。
 季節はもうすっかり初夏で、畑や花壇のナノハナ類はもう、とっくに花が終わって取り払われています。 だれにも片付けられない雑草のセイヨウアブラナは、大きく育った植物体全体に朔果(さや状で中に多数の種を含む)をつけて一株で大量の種子を生産します。 今が種子を入手する好機です。
空き地のセイヨウカラシナ群落
■空き地のセイヨウカラシナ群落
セイヨウアブラナの葉の着き方
■セイヨウアブラナの葉の着き方


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