歩くたびに、新たな発見が体験できると、いつか「かたつむり」に書いたことがあります。
ところが、わざわざ長い距離を歩かなくても、家から一歩外に出て、庭を見回るだけで、時には大発見に出会うこともあります。
もちろん、「「発見」といっても「私にとっての新発見」で、「「科学上の(人類にとっての)新発見」ではありません。
それでも、今年は、夏季活動が終わって、久しぶりに庭に出ると、何と“ニッコウキスゲのそっくりさん”が咲いているではありませんか、
本当の意味の「新発見」か……と近寄ってよく見ると、もちろんニッコウキスゲではなく、
花の大きさも色も形もすべてがニッコウキスゲそっくりなヘメロカリスの自然交雑による実生の一品種であることはすぐにわかりました。
さらに、ニッコウキスゲと違う点は、よい香りがあることでした(ニッコウキスゲは黄橙色、無香。ムサシノキスゲは有香。
ユウスゲは淡黄色、有香、夜咲)。それに、ニッコウキスゲを平地に植えると5月中旬ごろに咲きます。
また、私の庭のヘメロカリスの中には、香りのよいものが2〜3株あるのですが、いずれも、鮮黄色、百合型の花を6〜7月に咲かせ、
8月に咲くものはハマカンゾウ(赤橙色、無香)があるのみです*。「これはよい品種が誕生した」と踊り出したくなる気持ちでした。
同時に、これからが大変だとも思いました。新品種を、枯らさず維持し、できれば少しずつでも増やしていくことには、万全の注意が必要だからです。
これまで、苦い経験もしてきました。30年前、有名な育種家に手紙を書いて送ってもらった種子から育てた多くの株の中に、
8月に小ぶりの花を多数つける株や、買い入れて大事に育てたつもりの白に近い花をつける株が、いつのまにか消えてなくなったことがあるからです。
また、数年前、突然、真っ白な花をつけるシラー・ペルビアナ(濃い青色の花)が一本だけ、多数の青花の中に現れ、それから毎年、
花の時期に一本だけ咲くのを楽しみにしていたのですが、今年はなぜか、なくなってしまったのです。
これには本当にがっかりです。こんな悲しいことが起きないように、いまからいろいろ対策を考えておかなければなりません。
そうは考えていても、なかなか実際に有効な手立てをしてこなかったのがこれまでの実情なのです。
例えば、庭にたくさん咲くヘメロカリスの中に、鉢植えなのに、水を1ヶ月くらいやらなくても枯れない抜群に丈夫(花はよくない)なものがあり、
その株は、特殊な芸を持っていて、花茎の地上30cmほどの高さに子苗を生じる変わり者(櫓やぐら苗といいます)です。
この苗を鉢にとれば、ごく簡単に増やすことができ、次の年には大きく育って花をつけます。
今年も5〜6株のやぐら苗ができていますが、まだ鉢にとっていません。
ほうって置けばやがては枯れてしまうので、早くしなければいけないと、思ってはいますが、実行には至っていません。
園芸品であろうと、野生であろうと、ひとたび植えて、栽培を始めたものは、最低限の管理を怠れば、いつのまにか姿を消していきます。
もっと面倒をかければよかったと後悔だけが残ります。植えたものには、最後まで面倒を見る責任が、植えた人にあるのだと、思わなければなりません。
野山に自生している植物も、それぞれ、それなりの理由わけがあって、そこに自然に生えているのだから、
それを持ち帰って植えるのはよくないことだということがよくわかります。
私たちを取りまいている緑は、都市化とともに、どんどん、その質が低下しています。問題は、緑の保全、管理のありかたです。
土地を放置すれば、雑草がはびこり、本来、自然に生えるべきその地域の野草や自生木は、生きる場所を奪われて消え去るばかりです。
小さな発見から、いろいろなことを考えさせられました。
|