このレポートは、かたつむりNo.368[2012(平成24)04.15]に掲載されました

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取って置きの美味雑草
運営委員 鈴 木 照 治
 
ハルジオン ■ハルジオン
ヒメジョオン ■ヒメジョオン
セイヨウカラシナ ■セイヨウカラシナ 一押し 一推美味雑草
セイヨウアブラナ ■セイヨウアブラナ 一推美味
ダンドボロギク ■ダンドボロギク
ベニバナボロギク ■ベニバナボロギク
ウンラン ■ウンラン
ベニバナボロギク一関 ■ベニバナボロギク一関
 4月15日は、春の真ん中といえるでしょう。草も木も茎葉を展開し、緑あふれる季節です。 野山に向かう路傍や空き地には、4月で食べる予定のハルジオンの開花が始まります。 スミレやタンポポのような背の低い植物の花は盛りを過ぎてより大型のブタナやオオキンケイギクの黄色い花が見られます。 ひと月遅れてヒメジョオンの花が咲きますが、ハルジオンの花が残っている間に、ハルジオンとヒメジョオンとが、 生える場所をどう取り合っているか、調べると面白いと思います。やがて、そうした空き地には、冬の間、 同じようなロゼットをつくっていたオオアレチノギクやヒメムカシヨモギが、高く伸びてきます。 この二種をどう見分けるかは、コツがあります。見分けられたら、それぞれのもっとも得意とする生育場所に違いがあるのかどうか、 という難問に挑戦してみませんか。近ごろ、畑の端や道路沿いの植え込みに、 ひときわ大きなロゼットから伸びてくるダンドボロギクやベニバナボロギクを見るようになりました。 ダンドボロギクについては、高校時代、M先生**の植物採集のお供をして鎌倉の十二所(ジュウニソウ) や逗子の二子山に行ったとき、森林の木を一斉に伐採した跡地に、背よりも高い多数の株が群生するのを指し示して、 「この植物は、戦前(昭和初期)、愛知県の段戸山(ダンドサン)* で初めて日本で見つかったのでこの名が付いた。」と教わりました。北米原産の帰化植物で、関東ではその頃はめずらしかったのです。 果実に生えた多数の特に細く長い毛でタンポポより軽く遠くへ運ばれて、鎌倉や逗子にも生えるようになったのでしょう。
 ベニバナボロギクは、ひと足おくれて登場しましたが、今ではダンドボロギクより、よく見かけるようになりました。 郊外のちょっとした山道の入ってすぐのところで、よく道端で見かけます。最近では、住宅用の木材があまり利用されなくなり、 植林の管理も皆伐更新が行われなくなったせいもあって、山火事の後に一斉に生育し大群落をつくる姿も見ることはありません。 藤沢でダンドボロギクの群落を見たのは40年以上も前、 県の植生調査の際、善行から石川に入ったあたりのスギ林を皆伐した跡に成立したものでした。 帰化植物とか雑草とかいうと、いつでも、どこでも見られるありふれた植物を連想しますが、 中にはよほど探さないと見つからないものもたくさんあります。 ダンドボロギク、ベニバナボロギク、アカバナユウゲショウ、オオマツヨイグサ、それに、 前に紹介したことのあるオニマツヨイグサなどがそれです。うまく見つかれば、そして写真が撮れたら紹介します。 6月号で、私が初めて見た(気がついた)セイヨウアブラナはそれほど珍しくはない方かも知れません。
 上記の文章は、2010年5月に書き上げたものです。その際、写真がないかと懸命に探しましたが、 ダンドボロギクとベニバナボロギクがどうしても見つかりません。せっかく書いたのにボツにしなければならないかと思っていたところ、 9月のある日、玄関脇の半日陰にボロギクらしいのが生えているのを発見しました。数個のつぼみが出たばかりで、あと数日経って、 つぼみは上を向いたままならダンド、たれて下を向いたらベニバナと見守るうち、何日かが過ぎ、ようやくダンドボロギクと判明しました。 あとは、ベニバナボロギクが見つからないと「かたつむり」には載せられないまぼろしの原稿になってしまいます。 よく見かけるといっておきながら、あれから見つからないのは皮肉なものです。 とうとう2011年の秋も終わり、立冬を過ぎてアシュウスギの古里、芦生の森を訪れたとき、 ようやくベニバナボロギクの実物に対面することがかないました。 これでやっと「取って置きの美味野草ベニバナボロギク」を紹介することができます。 南の国では、おいしい野菜として活用されているということです。

 *段戸山は以前、夏活動で食い違い石を採りに立ち寄った道の駅の近くにあり、2011年夏も近くを通りました。 長篠城博物館、中央構造線露頭のある設楽地方を含めた奥三河と呼ばれる愛知県の東部一帯は植物の宝庫で、 いろいろな特産種があります。

 **植物採集家として名の知れた人とは後で知りました。

《歴史に登場する段戸山》:
長篠の戦いで織田信長に敗れた武田勝頼は、段戸山を越えて、信州側へ退きました。 昔は、名のある街道以外の道は、尾根伝いに山頂を越えるものでした。
ベニバナボロギク ■ベニバナボロギク
アカバナユウゲショウ ■アカバナユウゲショウ
オニマツヨイグサ ■オニマツヨイグサ


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