このレポートは、かたつむりNo.374[2012(平成24)09.02]に掲載されました

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静岡県指定天然記念物
運営委員 鈴 木 照 治
 
タマノカンアオイ
■タマノカンアオイ
カントウカンアオイ
■カントウカンアオイ
ハイコモチシダ浄蓮の滝
■ハイコモチシダ浄蓮の滝
ハイコモチシダ浄蓮の滝
■ハイコモチシダ浄蓮の滝
コモチシダ拡大
■コモチシダ拡大
 伊豆特産の植物としてまずあげられるのが、アマギカンアオイと静岡県指定天然記念物ジョウレンシダ(ハイコモチシダ)です。 アマギカンアオイは、タマノカンアオイ(昨年9月号に書いた)にとてもよく似た近縁種なので、 神社のようなところで見られるのではないかとさがしましたが、見つけることはできませんでした。 そのかわりジョウレンシダ(ハイコモチシダ)は浄蓮の滝の両側の断崖にびっしりと大群落状に生えているので、 近寄ることはできませんでしたが、だれもが良く見たことでしょう。
 60年前のころは、滝の裏側まで行くことができました。 せめて、拡大写真を撮ろうと、デジカメを目いっぱい望遠にして撮った写真で、葉の先に子株ができているのが写っていました。 本格的な望遠を持っている運営委員の先生にも撮っていただきました。 家のパソコンで見ると、はっきりとはしませんが、葉の先端近くに生じた珠芽から生まれた小さい葉を2枚つけた幼植物(子苗)が、 枯れかけた葉の先についているのが判別できました。断崖の下半分は内側にえぐれていますから、群落の下のほうの葉は、 空中に下がっている状態なので、幼植物のついた葉は、宙に浮いた状態です。 水分、養分ともに親植物の葉に頼っていた幼植物は、このあと葉が枯れれば運命を共にするほかはありません。 親を失った幼動物を保護するように、枯れる運命にあるジョウレンシダの子を保護する手立てはないものでしょうか。 三日目の朝の散歩から帰ると、木太刀荘の前のガケに、コモチシダが生えていて、近寄って大きく撮影することができました。 見ると、多数の小さな子どもが葉の表面についています。 ハイコモチシダにはこのような子どもはできないと原色シダ植物図鑑(著者はシダの専門家)に載っています。 運営委員に聞いた宿の人の話では、昔、浄蓮の滝から採ってきて植えたものだということですが、 もしこれが浄蓮の滝のハイコモチシダと同じ株であれば、信じられない大発見になるわけです。 「ハイコモチシダもコモチシダと同じように、葉の表面に多数に幼植物を生じる」ということになりますから…。 しかし、いくら探しても、葉の先端近くに一つだけできるはずの珠芽は見当たりませんでした。 ですから、これはやはり、ハイコモチシダと認めるわけにはいきません。つまり、ふつうのコモチシダと解釈するしかないわけです。 山荘の人のいうとおりだとしても、このガケは、コモチシダの生えそうな場所なので、年月の経つあいだに、 ふつうのコモチシダに入れ替わったと考えざるを得ません。それにしても、おもしろい話題を提供してくれたものと、山荘の人には感謝します。


* ちなみに、現在、採集禁止と明示されているものを許可なく採れば、条例違反で警察のかかわる事件になります。


ハイコモチシダ浄蓮の滝
■ハイコモチシダ浄蓮の滝
コモチシダ宿舎前
■コモチシダ宿舎前


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