科学少年団の活動で、毎年あちこちの博物館や資料館を見学します。施設展示の主要なものに、ジオラマがあります。
その地域を特徴づける野山の動植物の、生きたままの姿を知らせるための仕掛けです。
キツネやタヌキ、ノウサギなど以前は藤沢に住んでいた動物も、今ではいなくなってから多くの年月が経ちました。
彼らの住んでいた環境は、どんなだったか、正しく想像するのはむずかしくなりました。
以前なら、このあたりにも、野生動物が棲んでいたその当時の自然の環境を、
こまかいところまで再現したジオラマが理解やイメージつくりにたいへん役立ちます。
ところが、背景となる植物環境を微細にわたって構成するのは、実は大変な仕事になるので、つい最近まで、
背景の樹木や地面を覆う草の多くは、乾燥しても生きた状態を保つものばかりを利用し、
それを補う紙やプラスティック製の造花のようなものが使われていました。
ですから、1本1本の草や木が、それぞれの時代や人里はなれた現場の実物を忠実に再現しているわけではありませんでした。
細かいところまで復元するには、大変な予算と手間がかかり、いわゆる箱物だけをつくりあげた当時の情勢から考えれば、
それで良しとされていました。小中学校の生徒や一般の見学者の素朴な疑問に答えられる程度の背景環境の再現であれば十分と考えられ、
背景植物環境のつくりは比較的簡単なものでした。これが、20年ぐらい前までの感覚でした。
しかし、それから時代が一変し、生涯学習(社会教育とか成人教育などと呼ばれていました)がすすめられ、
パソコンの普及、ネットでなんでも調べられる時代になって、専門的な要求に十分応えられる博物館*の機能がますます重要になっています。
博物館もこの流れに応えて、細かいところまで考証が進んだ展示が整備されています。
今、私たちが何かを調べようとするとき、いちいち図書館までいかなくても、ネット検索しますが、そこで得られる知識は、
本で言うなら目次程度のもので、それで学んだとはとてもいえません。
ためしにネットで「藤沢市 鈴木照治」と打って検索してみてください。そこに出てくる数十項目を見ても、
実際の私とはかけはなれた記事が羅列されています。いつも皆さんが見ている私など到底想像もつかないと思います。
学校で教わること以外の勉強が、ますます重要視される時代がすでに始まっているのですが、図書館やネットは目次、
博物館は書き出しのあたりで、それから先は自らの実践(実戦)から学ぶという、ごく当たり前のことが、共通理解されないのです。
ここでいう実践は、学校を出てからのことではなく、幼児の段階から始まっていることです。
子どものころからそうしたことが身についていることが望まれるのです。
大人になってから動物園に写真や絵描き以外に行く人はあまりいないと思いますが、植物園はいかがでしょうか。
だれでも、自分の頭の中にある知識体系の土台は、目の前の実物体験から立ち上げたものですから、
子どものうちからどんどん博物館に行ったほうがいいと思いますがどうでしょう。
* 博物館にはいろいろあって、科学系博物館だけ見ても、動物園や植物園、花園、水族館、
ブラネタリウムや小規模の資料館も含まれます。大学や高校、小、中学校内にもあります。
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