この冬のきびしい寒さで葉物野菜(ホウレンソウ、キャベツ、ハクサイ)の値が上がっています。
それでもスーパーではダイコンが安売りされています。
伝統的な大根作りは、夏の終わりの8月下旬に種を蒔いて、秋の間に成長して初冬にようやく太い大根ができます。
9〜10月頃の大根畑を見た人は、たくさんの葉を放射状に大きく広げた姿(ロゼット)のダイコンがずらりと並ぶ秋の風景を思い浮かべることでしょう。
ダイコンは冬がおいしい季節です。
ダイコンが店に並ぶのは11月から4月までで、5月から10月の間は、品薄になります。
その頃は値段も高く味もよくないので、買う人も少ないのでしょう。冬野菜の消費量は、ダイコンとキャベツが王座を競います。
ダイコンのように、地表に葉を放射状に広げる植物の越冬形を総称してロゼットといいます。
野草のロゼットについては、前号のかたつむりで書きましたが、ダイコンやカブの仲間で野生するものが、秋にはロゼットをつくることはあまり知られていないようです。
(辻堂海岸に自生するハマダイコン) 日本の秋の生育適温と降水量に恵まれた地域では、冬野菜の栽培が全国的に行われています。
10年前のかたつむり247号で、湘南地方が、自然農法で冬野菜の作れる好適地であることを話題にしましたが、中でも藤沢中部の六会地区は、昔から、キャベツとダイコンの産地でした。
藤沢を縦断する467国道の両側に広がる畑には、秋から冬にかけて整列した生育中のキャベツ、ダイコンが無限に続く印象的な風景が、
最近までかなり残っていましたが、見られなくなったと思ったとたん、今回の冬野菜の高騰です。
改めて昔からの冬野菜の生産最適地である藤沢中南部の畑を思い浮かべました。
この数十年間、ビニール・ハウスや温室での換金作物づくりが広がるにつれ、伝統的な冬野菜の栽培は、六会の一部に残るのみだったのです。
この1・2年、石油事情が大きく変わり、農業への影響も必至です。省エネ農業への政策の変換が望まれます。
冬野菜は、根菜、葉菜を問わず、ねぎ類を除くすべてが、生育初期に必ずロゼット型の時期を過ごします。
ほうれん草はロゼットの時期に特有の栄養素を大量に生産するということです。
初秋、9月上中旬、冬野菜の生育途中の形を見ると、どれもが、それぞれ特徴のあるロゼット型をしています。
しかし、10月にもなるとロゼットがわかるのはダイコンぐらいで、葉物野菜は少しずつ姿を変えて、売られているときの形に変わっていきます。
そのダイコンも初冬の頃には、あとから生えた中心部の葉が立って、売られている葉付き大根の姿になります。
幼苗期にロゼットをつくり、寒い冬を乗り切って育つ越年草の姿を見ると、なつかしいような気がします。
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