このレポートは、かたつむりNo.385[2013(平成25)06.09(Sun)]に掲載されました

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植物名の英和辞典
運営委員 鈴 木 照 治
 
セイヨウアブラナ1513湘南台
■セイヨウアブラナ1513湘南台
菜の花畑5403湘南台
■菜の花畑5403湘南台
ナタネ畑5409震生湖
■ナタネ畑5409震生湖
大輪菜の花5403
■大輪菜の花5403
早咲白菜系5403
■早咲白菜系5403
セイヨウカラシナ群落大庭
■セイヨウカラシナ群落大庭
 市の総合図書館に入った新しい本を手にしてみると、以前から知りたいと思っていた英語の植物名が出ている辞典でした。 私の持っている普通の英和辞典では、調べることが難しい英語の、植物名をひくことができます。 日本では、植物の正式名称には“和名”を使いますが、欧米では、“学名”を使います。 外国の人に植物の名前を言うときは、正式名称として学名をそのまま使います*。 通常はそれでよいのですが、英語名(英語圏の人が使っているその植物を指す言葉)を添えれば、より相手に理解されやすいでしょう*。 借りてきた「植物名の英和辞典」を手にとってパラパラとめくると、ふと目にとまったのは「rape セイヨウアブラナ、ヨウシュナタネ」の項目でした。 それによれば、セイヨウアブラナは温帯地域で広く栽培されている油料植物(菜種油の原料)ということです。 半世紀前までは、日本中で、春にはアブラナの「菜の花畑」が広く見られました。「菜の花畠に入日うすれ……」の歌は、その頃の日本の風景を歌ったものです。 その後、セイヨウアブラナを原料とした外国産のものが一般化し、アブラナを栽培してナタネ油を採ることはなくなって昔の「菜の花畑」はほとんど見られません。 いま見られる畑の「なのはな」は、アブラナと同じ系統の小松菜や白菜などを収穫しなかったものが花を咲かせているものです。 一方、観賞用にも小松菜や白菜の種を蒔いて、「なのはな」咲かせています。 現在、食用油としては、ヒマワリ、大豆など他の植物からものが多くなって、菜の花は観賞用に栽培されるものばかりです。 それも、よくよく見ると、早咲きのハクサイ系統のもの**、改良されてやや大輪のものなど、昔からのアブラナといえないものがほとんどです。 十年ほど前、秦野から震生湖へ歩く途中、しばらくぶりに伝統的なアブラナの畑に出会ったことがあります。 これも、いま思えば、セイヨウアブラナだったかも知れません。4月活動のときに、セイヨウアブラナを一株だけ見つけました。 さて、私が藤沢で見た雑草化したセイヨウアブラナは、どれも単独か少数で生えていろものばかりで、多数の株が群落になっているのを見たことはありません。 一方、セイヨウカラシナの方は、どれも群落です。 そこで私は、セイヨウアブラナの群落をなんとか見つけたいと思ってあちこち探していますが、どうしても見つかりません。 セイヨウアブラナと種類的には同じと思われる「のらぼう菜」は、その後、テレビのインタビュー番組で遠藤憲一さんが奥多摩地方で、 おひたしにして、とてもおいしい野菜として紹介していました。 「植物名の英和辞典」では、セイヨウアブラナが、世界中の温帯で、広く栽培されるとしるされています。 「かたつむり」には「とてもおいしい雑草」として、なにか珍しい植物であるかのように何回か書きましたが、世界全体から見れば、 ごくありふれた植物であることがわかります。セイヨウアブラナはアブラナとキャベツの雑種起源ということです。セイヨウカラシナも同じように雑種起源です。 キャベツの原種の故郷は地中海沿岸、アブラナの原種は中東アフガニスタンの奥地あたりだと本で知りました。 それぞれの植物は、長い歴史の中で人に栽培され、少しずつ変化しながらそれぞれ長い旅を続けて同じ場所に出会い、 交配してセイヨウカラシナやセイヨウアブラナが生まれ、雑草化したり、栽培されて広まったりしたのではないかと考えました。 時には、本を読んで、ちょっと勉強してみると、いろいろなことがわかって、また外にさがしに出かける楽しみが増えます。

日本でも、土地の人は、昔から使われているその木や草の名前で呼ぶので、必ずしも和名とは一致しません。 花屋さんや植木屋さんも通称をつかいますが、面白いのは、外来植物を呼ぶときで、学名を使うことが多いのです。
** 小松菜も比較的早咲きです。
4月活動のセイヨウアブラナ
■4月活動のセイヨウアブラナ
畑のセイヨウアブラナ
■畑のセイヨウアブラナ




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