4月1日という日にテレビや新聞で、大きく「STAP細胞」関連のニュ−スが出ました。
2月に画期的な論文が出されたというので、とても興味がわき、もう少し詳しく知りたいと思っているうち、
3月になって複数の疑問が出されて、思わぬ方向へことが運んでいきました。
2月に論文が出たとき思い浮かんだことを整理すると、
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ES細胞:胚細胞→多機能細胞……クローンヤギ誕生のビッグニュースはもう昔の話、クローン牛も実現し、
ヒトの胚からの採取は倫理問題から禁止―もよく知られています。
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iPS細胞:体細胞+遺伝子操作→多機能細胞……2006年に発表され、山中博士2012年ノーベル賞で知られます。
転写因子と呼ばれる遺伝子を操作して、培養した皮膚細胞から多機能細胞をつくり出す―という方法は技術的に非常に難しく、
再生医療などへの実用化には、なお時間がかかる模様。
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STAP細胞:体細胞+環境操作→多機能細胞……通常の細胞に、刺激を与える(弱酸性の液に短時間漬ける)
だけで多機能細胞が得られるというのは画期的な大発見なのですが……
2月のニュースで私が思ったのは、植物では体細胞からいくらでも子どもがつくられていく(栄養生殖:無性生殖)
のに動物ではほとんど見られないが……それができる方法があるのか?……ということでした。
江戸時代に見つけ出されたソメイヨシノという桜は、接木という方法で増やされたクローン株で、
現在何百万本にも増殖されて全国に存在します。春先に出回るイチゴも、つる先の子苗から増やします。
栄養生殖で増やすイモ類の栽培は、イネ、ムギなど種から育てる農業より古い歴史があります。
種でしか増やせない植物ではどうか、……もう半世紀以上も前、新聞に、いま東大で進めている研究の記事があり、
ニンジンの細かくきざんだ一片を試験管で培養すると断面から生じたカルス(癒合組織)
から小さなニンジンの子どもが生じるというものでした。また、昔読んだ科学雑誌に、昆虫でも、ある種の寄生蜂が、
宿主(さなぎ)に1個の卵を生みつけると、宿主の体内に多数の幼虫が生じて、
やがて多数の小蜂が羽化するという話が載っていました。植物の芽先に無数にたかるアブラムシは、
次々と子虫を産むが、このような単為生殖といわれる生殖法は、胚細胞起源の多機能細胞に由来すると見てよいのでしょう。
学校でよく見るコモチベンケイソウや園芸店でよく見るサンセベリア(チトセラン)という観葉植物を「葉挿し」で殖やす方法など、
植物では「体細胞+環境操作→多機能細胞」というSTAP細胞の手法が、昔から行われているのだから、動物でも不可能ではないと、
だれもが待ち望んでいるとき、山中博士のiPS細胞ノーベル賞に続いてのSTAP細胞のニュースに私も胸が躍ったものです。
論文の運命はどうなるのでしょうか。思えば小学生の頃、旧制中学1年の使う教科書に、タンポポの根を薄く輪切りにして砂に乗せ、
水を切らさぬように養うと、小さな芽と根が出てやがて小苗ができると図入りで説明されていました。
80年も前の教科書に記されたバイオ技術の一端にふれ、生物の世界の不思議さを子供心に印象付けられた記憶があります。
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