以前、お話したかもしれませんが、少年の森の広場のまわりに生えているタンポポは、30年前には在来種のカントウタンポポだけだったのが、
セイヨウタンポポがしだいに増えて、一時はほとんどがセイヨウタンポポに占められたが、最近はカントウタンポポが増え始めて、
昨年は大部分カントウタンポポになりました。自然環境が回復して、昔の植物が帰ってきたと素直に喜びたいところですが、
少し気になることがあります。去年かおととし、新聞に出ていたセイヨウタンポポの不思議な行動の話です。
セイヨウタンポポは単為生殖で繁殖することは、昔から知られていました。
この生殖法を持つゆえに、受粉を媒介する昆虫のいない都会のまん中や、亜寒帯の荒涼地でも子孫を増やせるのです。
単為生殖は受粉(受精)によらないで、めしべの根元の胚珠の中の卵細胞から、親と同じ2倍体の種子ができる繁殖法です。
では、このとき花粉は何の役にも立たないのかというと、そうではなく、これがとてつもない秘密兵器で、
この花粉が在来種のタンポポの花に運ばれ受粉すると、受精卵の遺伝子がセイヨウタンポポのものに入れ替わってしまうそうです。
そのためか、在来種の特徴を持ちながら、体質がセイヨウタンポポのように変わって、在来種が育ちにくい環境にも、
この「変身タンポポ」が生えるのだというのです。残念ながら目で見ただけでは在来種と同じ姿をしているため、遺伝子解析をしないと、
「在来」か「変身」かの区別はつきません。
何十年も前に読んだSF小説に、宇宙人が人間のからだにとりついて人間の姿のまま中身が宇宙人――という話がありましたが、
この新聞記事を見てからというものは、在来タンポポを見つけるたびに、これは本当の在来か、それとも変身か、それを見分ける一つの方法として、
まわりに生えている植物との関係をよくしらべて、なんとかヒントをつかみたいと思っています。(写真はすべて近年、少年の森で撮影したものです)
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