このレポートは、かたつむりNo.403[2014(平成26)09.15(Mon)]に掲載されました

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雑草の原産地
運営委員 鈴 木 照 治
 
メヒシバ
■メヒシバ
オヒシバ
■オヒシバ
エノコログサ
■エノコログサ
ヨモギ
■ヨモギ
古道入口
■古道入口
オヒシバ2
■オヒシバ2
 7月下旬から8月上旬は一年中で、最も暑い時期です。 この頃、出歩くと、丈の伸びた夏草を刈り取っている光景に出会います。 「この暑い最中になぜ?」という疑問に、「この時期に刈るのがいちばんいいんだ」という答えです。 そのわけは、「この草原を持続させる最もいい方法だから」、つまり、年1回だけの刈り取りで済ませるには、 この時期が最適だということなのです。
 実際、この時期に草取りを行うと、その後の裸地には全く何も生えてきません。 春から夏にかけての除草ではメヒシバ、オヒシバ、エノコログサ、ニワホコリなどが生えます。 夏の終わりになって、半日以上長雨が降ると、ようやく秋冬の雑草が芽生えます。 一年草の夏雑草と二年草の秋〜春雑草の種子の芽生える条件はこんなに違うので、 盛夏には、どちらも芽生えないのです。(スベリヒユ科など例外もあります)
 雑草にもいろいろありますが、その起源をたどれば、いれも極寒地、乾燥地、 海岸など植物の生育限界地(無植生帯)との境界付近を原産地とするもののように思われます。 そうした他の植物の生育を許さない極限環境に生育できる特性を持った植物が、 人間のつくる過酷な環境に耐えて生育するのが、我々の身近に生育する雑草なのだと、あらためて納得させられます。 そういう見方で見ると、川が押し流してきた砂や小石の堆積した河原に生えるヨモギや、 山崩れのがけに生えるススキのように、日本古来の植物も、雑草として人間の作った環境に生活の場を広げたこともわかります。 都市化以前の昔からある雑草は、早春のハコベやスズメノカタビラからイヌタデ、 夏はメヒシバ、オヒシバ、ニワホコリなど、畑作とともに生きてきた雑草ですが、 近年の都市化によって見られるようになったのは、ペレペラヨメナ、ヒメツルソバ、 ツタウンランなど岩がちの乾燥地から来たものをよく見かけます。
 私の家の近くに、人が通らなくなって半世紀以上もたった古道が数年前に復活されました。 数m離れて平行して自転車用道路があり、家を隔ててほぼ平行した広い車道に合流するまで、 たった40mほどですが、街中に現れた舗装されていない昔ながらの山道のような、土の上を歩く道です。 つくられた当時は、何も生えていないむき出しの土の道でしたが、数年たった今では、 季節によりさまざまの昔の雑草が生えています。今はオヒシバが全面にはえていますが、もう枯れています。 近道をするための抜け道になるため、ときどき人は通ります。 枯れたオヒシバは踏まれて砕けてちぎれ、風に飛ばされ、 あとにできた裸池にはやがてスズメノカタビラのような越冬性の春の雑草が芽生えることでしょう。 歩く人だけの、ほとんど人通りもない40mほどが、「四季それぞれの雑草の楽園」になっているのが興味をひきます。 特に、近年めっきり少なくなったオヒシバが、盛夏になると40mの道を一面に埋め尽くす光景は壮観でした。 近年、農耕栽培発祥の地として西アフリカの熱帯雨林とサハラ南部のサバンナにまたがる地域が、 揚げられるようになりました。オヒシバもこのあたりから広まったものでしょうか。 日本でも、シコクビエという昔作られていた作物は、オヒシバの改良されたものだといわれます。


ツタウンラン
■ツタウンラン
回復した古道
■回復した古道


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