庭に、シラーという青い小花を多数傘状につける丈夫な球根があり、種子でも繁殖するらしく、庭中に繁殖して、毎年、
春(4月下旬)には咲きそろい、数十年間にわたって、雑草を抑えて茂っています。
十年ほど前、その中に真っ白な花をつけるものが、たった1株だけ現れました。
これまで、白花を見たことがありませんので、それからというものは、毎年白花が咲くのをそれは楽しみにしていました。
近くに住む園芸に詳しい有名な先生がこれを見て、
「この白花の種を採って育てると、子は青花だが、孫にピンクの花が出るかもしれない」と教えてくれました。
それには少なくとも10年はかかります。数年たって白花をつける花茎が2本に増えて間もないころ、ある日、
ちょうどその球根の真上が、無残につぶされていて、地下浅くの球根が強いダメージ受けた様子がありありと、うかがえました。
門がなく、通りから3mほど入ったところで、初めは誰かがその球根だけをねらって取り去ったかと思いましたが、
あとで隣家に入った植木屋さんが、そのピンポイントに、はしごをかけて作業をしたと聞きました。
その翌春は青花ばかりが咲くだけでがっかりしました。その翌年もまたその翌年も白花は咲かず。
あきらめかけた頃、花のカタログを見ると、珍しく白花のシラーが売り出されていました。
カタログに出るくらいなら、それほど珍しくはないのかもしれませんが、園芸店でも、よその庭でも、
わが家のほかに白花の実物を見かけたことは一度もないので、私にとっては珍しい宝ものに違いありません。
それから数年たったある日、再びあの白花が同じ場所に咲きました。まだ小さい花茎ですが周囲の青花と見事なコントラストです。
一度失われたものが、ふたたびもどってきてくれたことがこんなにもうれしいものかと思いました。
長生きできれば、ピンクの花を拝めるかもしれないとがんばる気がわいてきました。
しかし、残念なことに、次の年はまた青花ばかりになり、それ以来、再び白花を見ることはありません。
地下の球根はまだ生きているかも知れないので、来年の春にかすかな期待をかけています。
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