キレンゲショウマの花(日光植物園)
キレンゲショウマの葉(箱根恩賜公園)
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2014年、夏の終わりに日光植物園に行きました。割引切符の使い残りを利用してこれまでにも何回か足を運びましたが、
この時期だと、キレンゲショウマという、牧野植物図鑑に載っていない、日本固有の属かつ種の、
きわめて珍しい花が見られるのが目当てです。ここに来れば、その植物が群生する様子が見られるということで、
わざわざ写真を撮りに来る人がいました。珍しい種類というわけは、1属1種であることです。
つまり、近縁種がないということは、昔、ここまで進化してきたが、今では進化を停止し、滅亡を免れて、
ようやく生命を持続している植物と思われるからです。日本の四国、九州が自生地ですが、明治初年に、
発足間もない東大の矢田部教授によって世界に発表された縁で、この東大日光植物園に植えられているわけです。
キレンゲショウマはユキノシタ科で、属名はKirengeshoma(gen.)で、和名がそのまま属名になっています。
ちなみに、よく似た名前のレンゲショウマはキンポウゲ科ですが、
宿根草で栽培されるアワモリショウマや野草のアカショウマはユキノシタ科です。バラ科にもヤマブキショウマがあります。
いずれも初夏に花を咲かせますが、キレンゲショウマの開花はもっと先で、初秋といえる頃になります。
属する科が違うのに、いずれもショウマと呼ばれるのは、もともとのショウマ(升麻)
であるキンポウゲ科のサラシナショウマ(若葉を茹で晒して食べる)の二回三出複葉に似た葉の植物の共通名称で、
花のない時期に見ると、ほとんど区別がつきません。ところがキレンゲショウマだけは、
葉の形が他のショウマとちがって一枚の大きな掌状葉で、一目でそれとわかります。
今年になって箱根仙石原の長安寺や強羅公園でも花のない時期でしたが、植物そのものに出会い、
わざわざ日光まで行かなくても花が見られることがわかりました。ショウマ類と全く違う葉の植物に、
どうしてショウマと名付けたのかを想像すると、類縁をたどって、ユキノシタ科のショウマ類にもっとも近縁であることから、
ショウマの葉でもないのに、こう名付けたのではないかと思うのです。
ショウマの仲間の園芸種アスチルベ(アワモリショウマやチダケサシの属)は 英国風や山野草風の花壇にをかざります。
私の庭にも毎年7月には花穂を見せてくれます。半世紀前、白、桃、赤三色の苗を植えましたが、現在はなぜか藤色だけが咲きます。
ショウマの仲間が見られるのは、本当の自然の草原や林間ですから、夏活動で奥日光を散策する機会があれば、
特徴のあるショウマの葉(二、三回三出複葉)を見つけてみてください。
レンゲショウマ
庭のアスチルベ
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アカショウマ(美ヶ原)
アスチルベの花壇
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