雷を捕まえる(1) | |||
凧→避雷針→ロケット→レーザー | |||
運営委員 高 木 茂 行 | |||
夏の夕方の一大イベント、雷。今年の夏は異常な暑さのせいか、強烈な雷が何度もやってきた。
皆はすでに知っていることと思うけれど、雷は電気の流れだ。
小さい頃、両親が教えてくれた“雷さま”がいるわけではない。
しかし、あれほど強い光とごう音を耳にすれば、昔の人が“雷さま”を信じるのもうなずける。 雷は、暖かい空気が上昇する時に発生する。 暖かい空気が急上昇すると、周囲の大気との摩擦で静電気が発生する。 下じきと髪の毛を擦ると、下じきに髪の毛がくっ付くのと同じ原理だ。 夏の太陽で暖められた空気は上昇しながら、いたるところで摩擦を起こす。 こうして貯まった多量の電気が、空気中を一度に流れて雷となる。 ![]() ![]() しかし、避雷針の実験はとても不便だ。 雷が落ちてくれるかどうは運まかせで、しかもいつ落ちるかわからない。 実験者は落ちる幸運?を望んでひたすら待つことになる。 避雷針を使った実験は、1年に2,3回、悪くすると1回もできずに終わってしまう。 これでは、研究は進まない。思った時に、思った所に雷を落とす方法はないか。 雷の研究を切望する人たちはひたすら考え、ついに革新的な考えに達した。 ロケットに金属ワイヤーを付けて雷雲に向かって飛ばし、ここに雷を落とそうとする方法だ。 避雷針は落ちてくれるのをただ待つしかないけど、急激に上昇するロケットを使えば、 人工的に雷を起こすことができるはずだ。 この革新的なアイデアにフランスのグループが挑み、1965年に世界で始めて人工誘雷に成功した。 この結果に刺激され、日本で始めてロケット誘雷に挑んだのが、 私の大学での恩師である堀井先生を中心とする名古屋大学のグループだ。 堀井先生は、日本でもロケット誘雷を成功させ、雷の研究を加速したいと切望した。 名古屋大学を中心とするメンバーと電力会社に声をかけ、 ロケットを飛ばして雷を測定できる体制を作っていった。 ![]() 堀井先生は、実験が失敗したことに失望した。 実験を始めるため、たくさん人々に雷を落とせると説明した。 これを信じて協力してくれた人達には合わせる顔がなかった。 そして何よりも困ったことに、今回の実験でその年に研究に使えるお金をほぼ使いきっていた。 今後どうしたらよいのか、先生は見当もつかなかった(続く)
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