20XX年 町から電球が消える日(3) | |||||
運営委員 高 木 茂 行 | |||||
私が学生だった頃、大学でLEDの授業を受けた。先生は学生に向かって、 「赤や黄色のLEDはできていますが、青いLEDはできないでしょう」 と言った。その時、LEDには興味がなかったから、先生の言葉を素直に受け入れ、 何の疑問も持たなかった。しかし、約20年の時が経過し、 青いLEDは町のあちこちで見られるようになった。 わかり易くするため、2種類の固めの針金で考えてみよう。 幅の広い間隔の針金(ア)と細い間隔の針金(イ)の2種類が、図1@のように横に並んでいたとする。 (ア)がGaNで、(イ)が基板とすると、当然のことながら(ア)と(イ)はつなげない。 なんとかつなぐには、どうしたら良いのだろう? まず、思いつくのは出来るだけ幅の近い、 (ア)と(イ)を選ぶことだ。そこで、(ア)に近い基板としてサファイア (あの宝石のサファイアと同じだけど、人工のサファイア)が選ばれた。 実際にサファイアの上にGaNを作る実験をしてみると、GaNの膜は部分的にポツポツとゴマ状になり、 一面に広がる膜は出来なかった。図1Aのように少しぐらいなら変形してつながるけど、 長くなるといずれどこかで壊れる。このため、小さな固まりとなってしまった。 ほかに方法は無いのだろうか?ここで、(ア)と(イ)の幅の中間の幅を持った針金(ウ) を入れたらどうだろう。図1Bのように(ウ)が(ア)と(イ)を橋渡し、 上手くつながるのではないだろうか?いろんな材料といろんな条件を組み合わせ、 やっと基板の上の一面に広がるGaN膜を作るのに成功した。今では、(ウ)はバッファ層と呼ばれている。 例えば、携帯電話はバッテリーで動いているから、一回の充電で長持ちさせるには、 図2のような画面で使う電気の量を減らした方が良い。 LEDの方が同じ光を出すにも少ない電気ですむことから、 最近の携帯電話の画面では電球の代わりに白色LEDが使われている。 また、寝る時に本を読むための図3のような読書灯でも、電球の代わりにLEDが使われている。 LEDにすることで、電池でも長い間使うことができ、持ち運びにも便利だ。 こうして、LEDは少しづつ電球に置き換わっている。 十年前にカメラといえば、フィルム式が主流だったが、いまではデジカメが主流になっている。 何年もすれば、LEDが電球に置き換わり、この文章のタイトルのように「町から電球が消える」かもしれない。 さて、ここまでは一般的な話。高木運営委員の反省を最後に。 もし、大学の時に、先生に「どうして青いLEDはできないのですか?」と質問をしていたら。 あるいは、GaNの膜を作るような実験を学生の時にやったかもしれない。 そうすれば、何らかの形で青色LEDを作ることに携われたかもしれない。 科学では「どうしてだろう」という疑問を持つこと重要だと、青色LEDを見るたびに反省させられる。 |