小学生には負けられない。目指せ、日本百名山!(2) | ||||||||
- 山の科学(2) 雲の中 - | ||||||||
運営委員 高 木 茂 行 | ||||||||
昨年の7月に日本百名山の一つである北海道の雌阿寒岳(1499m)を目指した。 朝の天気は雨であったが、天気予報によれば午後には天気が回復するということであった。 午前中は阿寒湖を観光し、11時頃から登る計画とした。 図1は山に登る前に、雌阿寒岳近くのオンネトー湖から雌阿寒岳を見た景色である。 左側の山が雌阿寒岳、右側の山は阿寒富士である。 この時は、雲が左から右に向かって、かなりの速度で流れていた。 湖付近は快晴なのに対し、目指す左側の雌阿寒岳はすっぽり雲に覆われ、 山に登るのは多少不安であった。 しかし、天気が回復するという天気予報を信じて山登りに挑戦し、 雲の中を嫌というほど経験することになった。 登山口で登山届けを見ると、この日はすでに何人かの人々が山頂を目指していた。 中には21人のグループ参加もあり、山頂を目指そうという気持ちが湧いてきた。 雨でぬかるんだ登山道を少しずつ登り始めた。 雌阿寒岳は登山道を示す道標もしっかりしていたし、山頂までの道のりが分るように、 1合目毎に標識が示されていた。図2は、2合目を少し超えて所の風景である。 ここではまだ、陽が射していたが、山の上は雲に覆われていた。 4合目からは少しずつ霧が濃くなり、5合目では完全に霧の中に入った。 湖から見えていた雲の中にはいると、それは霧の中にいる状態だった。 気象の本には、『実は、雲も霧も、霧の仲間の靄(もや)も本質的には同じものである。 …地面についていない、ごく小さい水滴が上空に漂っているものが雲、 霧はそれが地面付近に漂っているものである』と書いてある*。 まさに、その通りだった。 5合目から先は、ますます霧が濃くなり視界も悪くなった。 7合目からは風が少しずつ強くなり、8合目からは、悪い視界と強い風との戦いとなった。 周囲は灰色で、さすがに心細くなった。悪天候のため下山を考えた時、 先に入山した21人のグループに追いつき、一緒に山頂を目指した。 濃い霧の中で体は濡れ、身体は冷え切っていた。 眼鏡には水滴が次々と付着し何度も拭いても見えなくなった。 ついにはあきらめて、眼鏡を外した。9合目の風の強さは台風並みだった。そして気付いた。 湖からの早い雲の動きは、この猛烈な風で雲が流されているのが見えていたのだ! やがて立っているのも困難となり、前かがみの体勢をとって押しだされるように歩いた。 そろそろ限界だと思ったところで、無事山頂に到着した。図4を見れば、その悲惨な状況が分る。 普段なら山頂で休憩するのだが、それどころではなかった。早々と下山を始めた。 9合目、8合目と次々と下って4合目を過ぎると、山頂での霧と風は嘘のようだった。 3合目に到着したところで遅い昼食を取り、登山口まで下山した。 今回の山登りで、雲の中を存分に体験した。 結論的には、『雲の中にいるのは、霧の中にいるのと同じ。 ただし、地上から雲の動きが見えるような時は相当な風が吹いている』だ。 ところで、どうすれば1回目の気圧の実験や今回の雲の中を体験できるのだろうか。 もちろん山に登ればよいのだが、山登りにはそれなりの経験が必要で簡単には登れない。 ただし、今では道路が整備されて車で高いところまで登れる。 藤沢市の八ヶ岳野外体験教室に泊って299号線を走れば、標高2150mの麦草峠まで登れる。 これは1回目の両神山や今回の雌阿寒岳より高い。天気が悪ければ雲の中も体験できる。 さて、山に登る最大の楽しみは、平地では見られない美しい景色が見られること。 その中でも尾瀬に代表される高層湿原はとくに美しい。 次回はそのお話。 (つづく)
*村松照男:図解雑学気象のしくみ,株式会社ナツメ社(1998) pp.28-29
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